「麗、C地区の先月の伝票ない?今更になってS社の久坂って人から苦情来たんだけど」
「ちょいまち・・・・これ」
「さんきゅ」
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品質管理部。
発送される製品をレントゲンで撮り、その写真を添付した伝票に品質データを書き込んで梱包に回す仕事。
デスクの電話が鳴る。
「立川さん、俺とります」
「うん」
「はい、品管です。・・・・・・はい、ちょっと待って下さい、・・・部長!伝票催促来てますけど!」
「どこ地区?!」
「・・・どこ地区ですか、あ、はい、D地区みたいです!」
「あと三枚!今回す」
「今行きます、はい」
では、と電話を切った品質管理部レントゲン担当。
「立川部長、俺伝票持っていきます」
「よろしく」
催促されたD地区発送伝票をやっつけた立川は振り向きもせずに他地区のものに取り掛かっている。
「・・・部長、苦情処理の高柳次長から十二月のA地区の催促きてるんですけど」
「黙らせといて」
「・・・・・」
品質管理部の総員、三名。
去年作業がデータ化されて効率は良くなったとはいえ、さすがに年度末の忙しさは営業部に匹敵する。
部長、立川のデスクには書類と伝票が山積みだ。
「レントゲン上がりました!置いておきますね」
戻ってきた社員がレントゲン写真を持ってくる。
「ちょっと手伝って」
そう引き止める立川に表情がひきつっている。
「は、はい」
立川のデスクの隣のデスクにも同じ型のパソコンが起動されており、どうやら並列して作業をすすめていたらしい。
「最終チェックの欄ね、X−レイグリッドG2型から入力して。いい?1、1、1、1、1、F、1、F、1、1、1、1、1、1、1、1、3、1、1、1、F、3、1、1、1、1、1、1、1、1、1、1、1」
画面に吸い込まれているのかと見まごうほど顔を近づけてその社員は言われたようにデーターを入力する。
「復唱します、1、1、1、1、1、F、1、F、1、1、1、1、1、1、1、1、1、3、1、1、1、F、3、1、1、1、1、1、1、1、1、1、1ですね?」
「・・・ちがう、18番は1。そこからずれてるから17番の1を消して一つづつ上にずらして。それで最後にもうひとつ1を入力」
「1、1、1、1、1、F、1、F、1、1、1、1、1、1、1、1、3、1、1、1、F、3、1、1、1、1、1、1、1、1、1、1、1ですか」
「そう。それプリントアウトして持って行って」
「はい」
「麗ー!伝票とりにきうわっ」
「・・・・・・」
やってきた榊。プリンターに走る社員と激突し、立川のデスクにぶつかる。
バサバサと落ちる書類。伝票。
「・・・・ごめん」
「・・・・・・」
にこ、と笑顔を浮かべて立川麗子が立ち上がる。
親指を立ててにぎりこぶしをつくり、それを上下反転させて思いっきり下に振った。
「・・・死ね?」
だから、三月の仕事量は半端ないって前にも言ったよな?だからお前、そうその伝票の山崩したお前、死刑決定な。
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