「ばっかやろう!!」
榊が叫ぶ。
それにかぶさるようにノイズが聞こえる。
『あら、利用されたのは篠崎美影?
彼女は地獄の炎に焼かれて死にました!
右の扉は安全、安全!
さぁ進め、進め!
今宵のショーはまだまだ沢山ご用意いたしております。
さぁ、次のステージに進むのであります!』
高柳が榊に下ろされる。
放心状態の彼女。
理由は明確だ、菅平さんが死んだから。
チラリと見えたあの死体は恐ろしい程無残で、薫や美影が読んでいた小説に出てきそうなグロッキーななにか。
「・・・四人」
ポツリと薫がつぶやく。
「必ずトリックで誰かが死んでる。あと四つ部屋を過ぎるころには全員死亡ってことね」
皮肉めいた口調は見事に感情の抜け落ちた言葉。
「確かに、その可能性は一番高いけど」
でも、と続けたかったが、頭で考えている仮説はほぼありえない。
もう誰も死なないで、なんて。
「行くよ」
榊が右の扉を開ける。
薄闇。
バタ、といやな音がして、振り返るとさっき美影が吸い込まれた左の扉が消えていて、迫る炎のオレンジ。
「デジャブだね。ほら、麗も早く」
「うん」
高柳を引っ張りいれた薫が戻ってきて、私をせかした。
足早に入った次の部屋は、おおよそ部屋と呼べる代物ではない。
「・・・林?」
「みたいだね」
榊と薫の言うとおり。
私の目にも、そこは林にしか見えなかった。
ふと目に付いた看板。
「ザ・ネクストゲーム・イズ・・・ハイド・アンド・シーク。次のゲームはかくれんぼです?」
読み上げると、再びノイズ。
『グレイト!
次のゲームはかくれんぼであります。
ルールは簡単、殺し合い!足元をご覧ください、拳銃があるでしょう?
一発分の弾が入っています。
この部屋に扉はありません。
一人、犠牲者が出たら自動的に林が消える仕掛けであります!
私が合図をしてから十秒後、猟犬が5頭、放たれます!
反撃のチャンスは一発の銃弾にかけられますが、一頭残ってしまう!
あら大変!!
でも、大丈夫。
自分以外の人が食い殺されれば、トラップ解除!
・・・あぁ、拳銃で、仲間を一人殺せば、トラップ解除ですよ?
どうぞ、ご自由に。』
「悪趣味」
榊の感想は的を射ている。
拳銃を手にする私たち。
「・・・全員でさ、猟犬だけでも全部始末できないかな。共食いみたいなことは」
「できるなら、でしょ」
突然高柳が割って入る。
「無理だよ。どっちにしたって、出られない」
生気のない声は、ゾンビめいていて恐ろしい。
『仲間割れ、なんてステキ!!
カウントダウン、スタート。
10、9、8、・・・』
「あたしは一人でもここから出る」
最後に言い残して、高柳は走り去る。
榊がそれを追って林に紛れ、私と薫は取り残された。
『5、4、・・・』
どちらからともなく見合わせられた顔に、苦笑が浮かぶ。
『2、1。・・・ゴー』
沈黙。
ズドン。
ただ、不思議なことに、銃声が一発聞こえた。
急速に力が抜けていく。
「麗?!うそ、」
薫が泣きそうな顔をしていた。
暗転。
hide-and-seek
(第4の犠牲者)
(立川麗子)
(銃殺)
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