「っていう夢を見た」
「お前いっぺん死ね!」
「ええ?!新年早々俺今死ねって言われた?!」
「なにが『という夢を見た』どや、だよ」
そういって彼女はお正月恒例のおしるこを持ってきた。
「しょうがないだろ、・・・つかどやなんていってねーし?」
「知るか」
甘ったるいにおいを発する、おわんの中身を見てから俺は彼女をまじまじと見つめる。
「嫌がらせ?チョップスティックス欲しいんだけど?」
「知るか」
当然のように彼女の手にはお箸。
多分わざとだ。
彼女は少しぶっきらぼうで、よく暴言を吐いて、でもよく笑い、本当はやさしいことを俺は知っている。
こたつなど存在しない、ちょうどよい温度を保っている、寮の食堂。
「あ」
彼女が顔を上げたので俺は振り返った。
「あーもう、だめだよ気づかれちゃったじゃん」
「すまんすまん」
どうやら彼は俺に後ろから目隠しをしようとしていたらしい。
「新年あけましておめでとうございます、今年もよろしく」
なんて律儀に挨拶をする彼は俺の同室の友人だ。
「・・・よろしく」
そういやぁ新年挨拶してなかったなぁ、なんて俺はようやく気づいて二人に向けて挨拶。
「今年もよろしくな」
にこ、と笑った彼女に彼は声をかける。
「初笑いだね」
「あ、」
本人も気づかなかったらしい。
「・・・てーことはあれは俺の初夢だったのか」
落ち込む。
そりゃぁもう落ち込む。
あんなわけのわからん夢が初夢だったとは・・・・
「ま、もしかしたら正夢になるかもだし?」
彼女のフォローが地味に痛かったが、今年も気の置けない友人たちに囲まれて。
「良い年になりそうだ」
2013年、今年は
「ところでお前、お箸は?」
「・・・・((ジト」
「・・・((無視」
「・・・・(おおよその事情はわかった)」