例えるなら、それはルビー。
赤くひかって、とてもきれいだ。形が崩れているのが、少し残念なほどに。
カラスがしわがれ声でわめく。ゴミをあさり、七つの子に与える腐肉探し。
そこで、悪魔は微笑んでいる。母性を結晶にしたような、やさしい笑み。恍惚と足元を見つめては、甘い空気をむさぼる。
そこは、紅葉、落葉の、海。
カラリと乾いた音で空き缶が鳴く。
……それも、と。
彼は考察する。
……それも、すぐに消えてしまうよ。
ピシャ、―――
しめった音をたてて空き缶が死んだ。トマトジュースの飲み残しか、縁に赤い液体。
そこで、青年は微笑んでいる。慈愛に満ちた、優しい笑み。
足元の赤い、紅葉した海に顔をうつして。
甘く、しめった空気は動きすらゆるやかに止め、カラスは飛び立つ。
そこで、殺人者は笑っている。愛おしさを表して、美しく、歪に、微笑んでいる。
かれは赤がすきだ、とつぶやいた。だから、みんなにも見てもらえるように、世界を赤くしたんだ、と。
でも、残念だ。そんなに目を剥いて、せっかくの赤が台無しだ。せっかく、体はきれいな赤に染まっているのに。
そこで、罪人は笑っている。
……海と空が青いなんて、
彼は嗤う。
……誰が決めたんだろうね?
夕焼け空と血の海