それは、昨日の夜の話。
「リナー」
「なぁにMー」
たいして距離は離れていないが、二人ともくつろぎながら言葉の最後をのばして会話していた。
「明日月曜だよなー」
「?そうだよー」
何を聞いているんだろう、という思考が頭に浮かんでは消えた。
「春休みも終わりだな」
「うんそうだね……って、え?」
あと一週間位無かったっけ?と聞くと「バカ、明日からは普通の平日だっつーの」と返された。
おぉうノウ…!!私ってば一週間春休み延長しちゃってたよ…!
これはうっかり。じゃなくて、
「じゃあ…」
ふるふると感動を押さえるように手が震える。
「あぁ。明日からはお待ちかねの学校だ!」
にかっと笑うと私は震える手を握り高い天井へと突き出した。
やったー!!と言う声と共に。
そして次の日、Mから借りていたパジャマからこちらの世界にトリップしてきた時の制服へと着替える。
ポップン学園は制服とかの規則はゆるいからどんな制服でも構わないらしい。
「リナ、着替えたか?」
ドア越しにMの声が聞こえ、肯定の返事と共に廊下へ出た。
「それじゃ行くぜ?」
「うん!」
「おう、良い返事だ!」
頭をぐしゃぐしゃと撫でると、玄関を出て学校へ向かう。
ちなみに神通力を使わないのは道を覚えるため。
いくら夢小説で迷子ネタがあるとは言え、実際なると大変だからね。
まぁ迷子ってのはオイシイけれど!
そんな考えをしている内にどうやら着いた模様。
目の前にはどでかい校門と校舎。
「まさかここまででかいとは…」
空を見上げるのと変わり無い大きさの校舎をみて感嘆の声が出る。
いや、これで出なかったらそうとうな者ですよ。
「そんじゃ、教師達には話付けてるからあとは頑張れよー」
ひらひらと手を振ったあと、パッと姿が消える。
……相変わらず凄いな、神通力。
がしっとちいさく拳を作り、いざポップン学園に突入!
「えぇっと、まずは職員室だよね…」
中等部の玄関から入り、キョロキョロと職員室を探す。
「誰かに聞いた方が早いかなー」
下手に探し回るより誰かに聞いた方が効率が良いと判断すればいざ人探し。
とりあえず廊下を歩いてみるがひとっこ一人居ない。な、なぜ…!?
「やっぱ探すしかないのかなぁ…」
人がいなけりゃ自分で探すしかない。
なんだか長そうな道程に思わずため息が出てしまった。
「あれー君新入生?こんな所でどうしたのー?」
なんだかとても癒される声で話し掛けられた。
そちらを見ればあの人……いや、あの子が居た。
「(た、タローちゃん…!)」
「あ、もしかして迷子?ここ広いから無理もないよねー」
あははーと眩しい位のスマイル(not妖怪)のタローちゃんに実は…とかくかくしかじかと事を話せば職員室まで案内してくれるそうな。
あぁタローちゃん、君は私の天使だ…!
「それじゃあ行こうか!」
「はい!」
「ねぇ、リナちゃんって新入生だよね?」
軽く自己紹介をしながら職員室へ向かっていると、タローちゃんが首を傾げて聞いてきた。
あぁ、タローちゃん可愛いよ。
「え、いや一応転校生…」
少し控えめに返すとタローちゃんは目を輝かせる。
「へーそうだったんだ!ねぇねぇ何処から来たの?家ってどこ?どこのクラスに入るの?」
「えぇっと」
いきなりなタローちゃんの質問攻め。
えぇ、転校生特有のアレです。さすがに一気に、しかも説明が大変そうな感じの質問ばかりで言葉が詰まる。
ふと視線を前に向ければ探していた場所の前まで来ていた事に気がつく。
「(た、助かった…!)あ、もう着いたみたいなんで大丈夫ですありがとうございましたー!」
半ば逃げるように職員室へ向かう。
いや違うのよタローちゃん!決して貴方が嫌いな訳じゃないの!
と一人タローちゃんに心の中で謝罪していると鼻に衝撃。前方不注意でした…
「ったたー」
「おっとごめんよ!大丈夫か?」
気持ち的に折れた鼻をさすりながら顔を上げるとそこにはあの…
「あ、ハジメちゃん!」
ナイスタイミングタローちゃん。
私の言葉を代弁するかの如く目の前の人物に駆け寄るタローちゃん。
「タローお前こんな所で何やってんだ?授業始まるぞ」
「違うよハジメちゃん、転校生ちゃんを案内してたんだよー」
おぉそうか、と納得したハジメちゃんは私に向き直る。
「校長から話聞いてるぜ。転校生の風宮だろ?オレがお前の担任のハジメだ、よろしくな!」
ハジメちゃんの笑顔は、夏の太陽のように輝いてる気がしました。
(タローちゃんと二人で夏組って感じ)
そして、タローちゃんも自分のクラスに戻り私はと言うとハジメちゃんと教室に向かう途中。
何ともベタな感じで、名前を呼ばれたら教室に入るらしい。
「おいおまえら静かにしろー」
ガラッと扉を開け騒めいていた教室は徐々に静かになる。
うわぁ緊張してきたー…!
「今日は転校生を紹介するぞー!」
静かになったかなーと言うクラスは再び騒めき始めるが、ハジメちゃんが宥める。
「よし風宮、入ってこい!」
ハジメちゃんが私を呼ぶ。
この扉を開ければきっとポプキャラ達……あぁぁ余計緊張してきた…!
だがいつまでも入らない訳には行かないので、唾を飲み込んで扉に手を掛ける。
風宮リナ、行きます…っ!
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