世紀の恋泥棒
「ジャックって本当、何か創るの好きよね」
何時ものように創作活動に勤しんでいる背中を見つめ、独り言の様にぽつりと呟く。
「ホワーイ?今更何を言っているのですか」
ちょうど一息ついた所なのか、いつもは何を言っても反応のない背中が振り向いた。
意外、と少し驚いたが、振り返った彼の少し眉を寄せた表情と言葉が、あまりにも私の真意を汲み取っていないので話を続けた。
「絶対、私よりも好きよね」
半分は冗談、もう半分は期待と少しの嫉妬。
呆れるように片方の頬を肘を付いて支えて笑えば、やはりジャックはジャックだった。
「まぁ、そうですね」
ドカーンと、爆弾を落とされた様な感覚に陥った。
あっさり、しかも何食わぬ顔で出された解答。口の端が引きつるのは当然だと思って良いだろう。
「…ありえない」
「?」
一応こうしてジャックのテリトリー…否、彼に言わせればキャンパス内に入り浸る事を許され、私もジャックの背中でも見ていれば幸せな関係だった。
確かに曖昧な関係ではあるけれど!そこは嘘でも私って言って欲しかったよ!
段々と怒りと悲しみが手を取って踊りだす中、ジャックは相変わらず顎に手を当てて何か考えている様だった。
「ナマエ、何か勘違いをしていませんか?」
ゆっくり開かれた口から出た言葉に、今度は私がクエスチョンマークを浮かべる番だった。
勘違いも何も、ジャックは私よりもアートが好きな事に変わりはないのではないか?
言葉の意味が解らず黙っていると、ジャックは絵の具を所々纏ったままだが綺麗に、ふわりと髪を揺らして微笑んだ。
「私は貴方が思っているより…ずっと貴方の事、想っていますよ」
頭がジャックの発言を理解するより早く顔に熱が集まり、それよりは遅く、ジャックが流れるような動きで私の唇を奪った。
もちろん、私の頭は理解するどころか完全にオーバーヒートしてしまった。
世紀の恋泥棒
(…ナマエ?どうしました?)
* * *
ジャックが!好きです!!
そんなこんなで自家発電第二段です。ジャックは乙女心とか全く分かんないと良いよ…!しかしやる事は乙女心を掴むと良いよ!(本人無自覚)と思って書きました。それってただのチートやんか…それでも大好きだけど…
(11/09/24)