バレンタイン戦線



コンコン



辺りが夕闇に包まれ出した自由時間。
自室で休んでいた風丸の元に、ノックの音が響いた。




「風丸、入るよ」




声の主が分かった瞬間、ドクリと心臓が跳ねた。
促すように声を掛けると、扉の間からひょっこりと顔を出した。




「あの…一郎太、これ。遅くなってごめん」




両手で差し出されたそれは、今日一日の気分を左右させていた原因。
思わず頬が緩むのが解り、ありがとうと受け取った。




「…貰えないのかと心配したんだけどな?」

「はは、ごめん…ちゃんとあげるのって初めてだな、なんて思ったら緊張しちゃって…」




顔を赤くしながら頬を掻く仕草と言葉に、つい嬉しいと思ってしまう。
「じゃ、じゃあ、手伝いに戻るね」と背中を向けた名前の手を咄嗟に掴む。




「…!風丸…?」




赤い顔のまま驚いた様子で振り向く名前に、ハッと我に返る。
意識した途端に、繋がれた手に熱が沸き上がるのが分かった。




「っわ、悪い」




急いで手を離すが、一人になった手がやけに寂しく宙を掴んだ。
俺は無意識の内に、名前と居られなくて寂しいと思っていたのだろうか。




「う、ううん」




俺が掴んだ方の手を、もう片方の手で包み込む姿が目に入った。その顔は、未だに赤い。




「…っと、その」




これが理性との戦いと言うのか、赤い顔の名前を前に心臓が大きく鳴り始める。
思考回路が絡まり出し、言葉が詰まり中々出ない事に焦りを感じて視線を泳がせた。




「…ホワイトデー、楽しみにしていてくれ」




絞りだしたように名前を見据えて、出来るかぎりに微笑む。
笑顔で返事をする姿を見て、この選択は間違っていなかったと胸を撫で下ろす。


(ホワイトデーでは、この衝動が抑えられるだろうか)



***

リアタイから摘出のバレンタイン夢でした。
リハビリも兼ねて書いたからちょっと妙な感じが…
ちなみに一郎太呼びは夢主が意識的に言ったことなので、驚いた時には風丸予呼びに戻っていますという無駄知識。


(11/02/14)
(11/04/02)



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