ぷちプロポーズ
メルヘヴンの中央に位置し、象徴となっているレギンレイヴ城。
ここではウォーゲームという名の戦争の舞台であるが、今は束の間の休息の時間が流れていた。
「ほーらほーら、こっちだよー!」
「待てーナマエ姉ちゃんー!」
きゃっきゃっと騒ぐレギンレイヴに集まっている子供たちと、その先頭で子供たちと鬼ごっこをしてる少女。
ナマエと呼ばれた彼女は、一見普通の少女だが実はチェスと戦うメルのメンバー。
いくつものARMを付けているのがその証拠だ。
「みんなどうしたのー?私はここだよー!」
中々ナマエを捕まえられない子供たちは、ナマエ姉ちゃん早すぎーなどと口を尖らせていた。
ナマエは立ち止まって自慢げに子供たちの方を向く。すると、一人の少年が背後から忍び寄り、ナマエの腰に抱きついた。
「わぁ!?」
「ナマエねーちゃんつーかまえた!」
「あははっ捕まっちゃったー」
腰に抱きついた少年に向き直り、抱き締め返す。
そしてこの一連の流れを見守っていた、一人の青年がナマエに近付き声をかける。
「ナマエ、あまり体力を使いすぎるなよ」
今は休息も必要だ、と付け足した青年の言葉をナマエは笑顔のまま返答した。
「大丈夫だよアルヴィス、ウォーミングアップだと思えば問題なし!」
ぐっと親指を立てるナマエに若干頭を押さえつつも、程々にな。と呟き微笑んだ。
「……………」
「…?(何だ?)」
その様子をむすっとした表情で見ていた少年は、黙ってアルヴィスを大きな瞳で睨み付けていた。
アルヴィスは何事かと思ったが、少年がナマエに更にしがみ付いた事に意識が向かった。
「おれ、おおきくなったらナマエねーちゃんとけっこんする!」
「!」
「え…えええ?」
少年の落とした爆弾発言にピクリと目を細めて反応するアルヴィスに、驚いた表情のナマエ。
少年はじっとナマエの目をみて、アルヴィスもまたナマエを見つめていた。
「そっかーありがとう、頑張ってね!」
「…!う、うん!おれがんばる!」
にこりと笑って出したナマエの答えに、少年は真っ赤になってナマエから離れてダッシュで逃げていく。
「ちっちゃい子は可愛いね。えへへ、私プロポーズされちゃったよ」
冗談めいてアルヴィスの方に向き合うが、アルヴィスは少年が走り去った方向をじっと見ていた。
「…受けるつもりなのか?」
「え?」
「さっきの少年の…」
アルヴィスの意外な発言に、驚いて目を見開く。
何処となく朱が浮かぶ横顔に、そっと距離を詰めてみた。
「ううん。あの子にだって、もっと大人になって、きちんとプロポーズする人が現れると思うんだ」
あの子の気持ちは嬉しいけれど、イエスと答えることも出来ないし断る事も出来ない。と付け加える。
「だからあの答え、か」
納得した様な表情のアルヴィスに向き合って、それに、と続ける。
「私、結婚するならね…その…」
恥ずかしげに俯いて指を弄るナマエに、アルヴィスも心音を高鳴らせて言葉の続きを待つ。
「アル「ナマエ姉ちゃんー!はやくあそぼーよー!」………う、うん!い、今行くよ!」
言葉は子供たちの掛け声に遮られたが、ある程度の予測がつく単語に二人は顔を紅く染める。
「えっと、みんな呼んでるから行くね!」
「あ、あぁ」
硬直を破ったのはナマエで、先程の少年の様に走り去っていく。
「………………」
あのタイミングで遮られていなければ、彼女の言葉を聞けただろうか。
もしかしたら、とまさか、の思考がぶつかり合い、赤くなる顔を片手で覆う。
「(…さっきのよりも大きい爆弾だ)」
(答えはもちろん、)
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いつもは夢主が赤面するような夢が多かった気がするので、アルヴィスにも赤面を。赤面男子至高です。
ちびっこのプロポーズにちょっと不機嫌になってれば良いです。