心配×頼る÷優しさ
今日はウォーゲームも休み、久しぶりに本でも読もうと書庫へと足を運んだ。
「ナマエ?何をしているんだ?」
「あっ、アルヴィス」
扉を開けた先には、本が積み上げられた広いとは言えない書庫で大量の本を片手づつでトレーのように運ぶナマエの姿が。
声をかければこちらに気付き返事をしてくれた。
「今ね、本片付けてるんだ」
そんな事はみて解る。
おおかた捜し物が見つかりそのために出した本を戻しているのだろう。
いつもより多く机や床に重ねられた本達と、寂しげな本棚がその証拠だ。
そんな事より俺が言いたいのは。
「そんな持ち方じゃ危ないだろ」
彼女は今、重さで折れてしまいそうな細い腕で、何十冊もの本を持ち上げているのだ。
眉を寄せた表情で早歩きでナマエへ近寄る。
「大丈夫だよアルヴィス、私こっち来てから力ついたんだから」
少し自慢げに話すナマエに短くため息をつく。
確かにそうかもしれないが、見ている側としては心配なんだ。
その言葉が喉に突っ掛かる。言えたら良いのだろうが、生憎そこまで器用な人間ではない。
そんなアルヴィスの心の葛藤を無視してナマエは縫うように積み上げられた本の間を歩く。もちろんあのままの体勢で。
重心があちこちに移動する歩き方は、やはり手の上の本達に影響を及ぼした。
「…っと!」
ぐらりと揺れた本の体勢を整えようとすれば、今度は体がバランスを崩す。
その瞬間には咄嗟に目を瞑る者と、咄嗟に手を伸ばす者が。
バターン
ドサドサッバサッ
そんないかにもな効果音をたてて、本の山に埋もれた。
足には本の重量と、背中にはしっかりと回された腕。
何がどうなったのかと目を開けばナマエを右腕で抱きかかえ、左腕で本からカードするアルヴィスの姿。
「…無事か?」
彼も閉じた瞳を開き、ゆっくりとナマエに確認を取る。
「う、うん…大丈夫」
ナマエの返事を聞けば、少しうねり声を上げてのしかかる本達を落とすように起き上がる。
「だから危ないと言っただろう」
不安が現実になった。そんな物言いだ。
ぴしゃりとナマエを真っすぐ見据えての台詞には、その言葉には怒りよりも心配と呆れの色が見える。
「ごめん…」
彼女が犬ならば耳と尻尾が元気なく垂れ下がっているだろう。
アルヴィスはそんなナマエの頭に手を乗せた。
「少しは頼ってくれて良いからな」
あんな荷物を一人で運ぶなら、呼んでくれても良いだろ。
ナマエが視線を上げるより早くアルヴィスは立ち上がり、手を差し伸べる。
「うん、ありがとう」
手を取りながら少しだけ微笑んだが、その顔はとても嬉しそうに輝いていた。
(アルヴィスに迷惑かな、って思ったんだけど)
(…ナマエが危険な目に会うよりは、よっぽどマシだな)
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オカンか過保護なアルヴィスを書きたかったけど、不器用なアルヴィスになったかと思えば王子様っぽいアルヴィスになっていた謎現象