「千鶴ちゃんさ、前世とかって信じる?」

それは唐突だった。いつもヘラヘラして底が読めない沖田らしからぬ、感情のこもったセリフだった。

「沖田先輩は、信じているんですか?」
人を喰ったような性格の沖田は占いやら何やらを常に馬鹿にしていたが、彼の表情は何かを恐れているような、しかし何かを期待しているそれだった。

「うん、信じてる、かな。」
「へ、そうなんですか。」
「意外?」
はい、というのもどこか失礼な気がして、千鶴は不明瞭な言葉を呟く。結局上手く返せず、すこし落ち込んだ千鶴が沖田を見ると、彼は苦笑を浮かべていた。可笑しい。いつもなら彼は私のすることなすことからかってくるのに。

「そんなに意外かな。」
「す、すみません…。」
「それで、信じてる?」

考えたことは確かにあった。テレビで前世の記憶を持つ人の特集をみたときに、自分にも前世なんてあるのか、と。しかしそれは普通の人間ならば誰もがするような想像の範囲であり、前世を真剣に考えるということはなんだか宗教的な気がする。
千鶴はそこまで考えがいたり、ふと我に帰った。しかしその考えは自身が前世を信じてないからだと結論づけた。

「私は…信じていないです。例えあったとしても今の私にあまり関係ないと思います。今は今ですから。」

沖田の目を見つめながら、千鶴はゆっくりと言った。その言葉は沖田に何かを言い聞かせるような響きを持っていた。
「そっか。」とだけ言った沖田の表情が千鶴の網膜に焼き付いた。




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