小学生氷室捏造注意

私の家の近所に、小学生の息子さんがいる日本人の家族が引っ越してきた。ここら辺には日本人は少ない。人種も言葉も違う国で心細いのか、比較的歳の近い私と彼はすぐ仲良くなった。
彼の名前は氷室辰也くん。子どもとは思えないほど整った顔の男の子だ。
学校が終わると私の後ろをついて回って、弟が出来たみたいで嬉しい。
しかし、氷室家が引っ越してきてから数ヶ月後、私の家は日本に帰国することになった。せっかく辰也くんとも学校のみんなとも仲良くなったのにとても残念だ。
辰也くんは、私がいなくなるといったらどんな反応するのだろうか。


「え、帰るの?」
案の定驚愕といった表情を浮かべた。大きな目をまん丸く見開き、いつもより幼い表情の彼に笑いが零れた。いつもは妙に大人びた表情を浮かべているのに、珍しいと一生懸命網膜に焼き付ける。
「そうだね、お父さんのこっちでの仕事終わったし。」
「そう。」
驚いた先ほどの表情とは裏腹に、やけに冷静そうな声だった。顔だっていつもの余裕そうな表情だ。なんだか残念だ。もっと悲しんだりしてくれるのかと思ってたのに、と私はふてくされてベンチに座った。足をぶらぶらと行儀悪く揺らす。
「もっと、寂しがってくれるかと思った。」
「十分寂しがってるんだけどな」
苦笑いを浮かべ、私の隣に座る彼は、私よりも余裕そうに見えて、なんだか私のほうが子どもじゃないか。ズルいなぁ。
「何年後か、また会おうよ。」
意思のこもった右目にじっと見つめられる。ツヤツヤした瞳から目がはなせない。
「そうだね、辰也くんとまた会いたいな。きっとイケメンになるんだろうな」
なんだか耐えきれなくなり私は辰也くんの目に気づかないふりをした。あの目はなんだ。なんであんな目をするの。それでもなお彼は私を見つめる。
「約束だよ。絶対に会いにいくから」
そういうと、彼は私の手をとった。握手だろうか。
しかしその予想ははずれたようで、手はどんどん辰也くんの顔へ近づく。
その刹那、手のひらに柔らかい感触。ついでチュッという所謂リップ音。
瞬時に理解出来ず、固まる体と頭。辰也くんはいまだ私の手をつかんだまま。
「口にしたいけど、まだ届かないから。」
仕方ないと言わんばかりの彼に、「誰がしていいと言った」とツッコミたかったが、依然として体は固まったまま動き出す気配はない。
「俺がなまえさんの身長を越えた頃、会いに行くから。」
こいつはとんでもないマセガキだ。





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