誰しも意味もなく眠れない日があることと思う。寝たいのに寝られなくて、寝ようとすればするほど目が冴える。
明日も早いのにな、と思いながら寝返りをうち、起き上がった。閉まりきらなかったカーテンの隙間から月が見える。満月のおかげで辺りがほの明るい。当然人は一人も歩いていない。

さびしいな。

ふとそう思い、最近会えていない彼を思い出す。最後に会ったのは三週間くらい前だろうか。修也くんは何やら忙しいらしく、走り回っているようだ。この間の電話でジャンヌダルクがどうのと言っていたが何のことだろうか。
電話が来たのはそれっきり。二週間前のことである。メールも朝と夜に「おはよう」と「お休み」だけ。こういうことに興味の薄い彼がメールしてくれるだけですごいことなのに、私は欲張ってしまう。
やっぱり、会いたいな。
時刻は草木も眠る丑三つ時。メールはまして、電話なんて迷惑だろう。ケータイを意味もなく撫で、窓辺に近寄る。慣れたようにアドレス帳から彼のページを呼び出す。初期設定のまま変わっていないアドレスに軽く笑いが零れる。
修也くんらしいなぁ。
それからふと電話番号を見る。これを押せば修也くんに繋がる。でも。デモデモダッテと自分を宥める。しかし指は勝手に動く。通話ボタンを押してしまったのは、全て満月のせいだ。
4、5回コール音が鳴り、繋がる。
『…もしもし。』
寝起き特有のかすれた甘い声にドキドキしたが、すぐさま我にかえる。
何電話してるの私!
「あ、いや、あの」『なまえ?』「う、あ」『どうした?』
どうしよう。どうした、なんて。絶対寝てたのに。迷惑なはずなんだ。言うことは決まっている。
「何でもないよ。」『…』「間違ってね、電話しちやったの。ごめんなさい。寝てたよね。」『…』「切るね。おやすみな」
『待て、今から行く。』
「へ?」
『すぐ行くから。待ってろ。』
「…ごめんね、わがまま言って。」
『お前のわがままはわがままの内に入らない。それに、お前一人寄りかかっても支えられる。もっと頼れ。』
「…ありがと」

彼が来るまであと…




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -