「ねえなまえ、覚えてる?」
そう言うとヒロトはふぅ、と息を吐き眼鏡をはずす。長時間パソコン画面を眺めていたようだから、疲れているのだろう。
「主語がない。」
「ごめん。」

クスクスと笑うヒロト。素っ気ない私の返答に少しも気を悪くしたようには見えない。本当に幼いころから一緒にいたのだ。私の可愛げの無い言葉も慣れているはずだ。
「君がお日さま園に来た日のこと。」
「…ん、どうだっけな。」
「覚えてないの?」

何分古い記憶だ。そんな昔を覚えてるはずない。久しぶりに見た、眼鏡を通さない翡翠色が困ったように私を見る。
「まぁ、仕方ないのかなぁ。」
「そういうヒロトは覚えているの?」
「もちろん。なまえと出会った日だもの。」

ヒロトはすることの無い指先で私の手を弄んだ。これはヒロトの癖だ。誰の手でもいいわけじゃなく、私の限定で。癖になるほど長いこと近くにいると考えると、なんだか照れくさいような気がする。
「一目惚れ、だったなぁ。」
「え、3歳か4歳のときだよ?」
「それでも。」
ヒロトは指を絡めて、私の手を握る。離さないと言わんばかりのそれに、苦笑いがこぼれる。
「それでも、その時一生俺が守るって、決めたんだ。」
ふわりと、幸せそうな笑みをこちらに向ける。つないでないほうの手で、私の頬をなでた。ヒロトの笑みはなんだか、私に最上級の愛情を与えているような気がして。先ほどのセリフと相まって顔が熱を持つ。

「俺に、あなたの人生を守らせてくれますか?」

気づけば流れていた涙もそのままに、ヒロトの胸にとびこんでいた。

過去も未来もすべて




わたしたち結婚することになりました様に提出




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