▼ 鋼錬大佐<夢>
「っしゃ合格! 知ってた!」
合格通知を片手についガッツポーズをとる。即座に家族と友人にのグループチャットにメッセージを送る。今日は祝杯をあげるぞ。無事試験を通過し、まもなく病院実習に突入することが確定した医学部の4年生だ。幸いにして仲のいい友人も全員合格していたもんだから心置き無く酒がのめるってもんだ。
少し足を伸ばしたいつもよりちょっといい店で祝肉を食べ酒をのみ、近所に住む友人とは最寄りからチューハイ片手にのんびり歩いてふわふわした酔っ払いのまま自宅に辿り着き、ぱたりと床に倒れ込む。机の上には散らばったままの黒い漫画の山。なんだかんだと落ち着かないものだから、発表前夜は懐かしい漫画の読破に勤しんでいたのだが、結局寝落ちしてよく覚えていないが悪夢で飛び起きたんだったか。ゆるりと体を起こし、冷蔵庫から水を出してのむ。ふふふ、今日はまだ気分がいい。ふと浮かんだのは昨晩の漫画の内容だ。
「一回くらいやってみることって、あるよねえ。大地に流れるエネルギーを使って、理解分解再構築ってね!」
パンと音を立てて手を合わせて体で円を作り、かといって特に壊れているものもないものだから、医者を夢見て新たな自分をイメージして自分の胸に両手を押し当てる。
バチリと、火花が散った。
「え、ここどこ」
目が覚めれば知らない天井。
「Oh,you're up? Where's the pain?」
え い ご か よ。
アメストリス東部の田舎の町医者に拾われてとりあえず必死で言葉に慣れつつ助手をしながら生き延びること一年、新聞でリオールの暴動を知る。一人でも救い、一人でも死なせないために恩師の家を飛び出す。
多分大佐推し。
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