最後の一人が解放し終えた萎えた一物を抜いた時、細い身体は死んでしまったかのように動かなくなっていた。
まだその少年が生きていると男達が確信したのは、多くの欲望を無理矢理受け入れさせられた後孔が浅い息と共にぱくぱくと収縮を続けているのが確認出来たためである。
収縮するたび真っ赤に熟れた蕾から、ごぽりと小さな音をたてて内部に満ちた白濁が零れた。


「――で、これどうする?」

欲を満たした強姦者の一人が面倒そうに少年を見下しながら他の男へ尋ねた。
興奮に荒くなった呼吸と乱れた衣服を整え、男達はこの場から立ち去る準備を進めている。空は何時の間にか夕闇に星が浮かび始めていた。

「可哀想なことしちゃったな、あんなにいっぱい啼いて」
「いっそこのまま死んだ方がましかもしれないな」

今も死んでいるも同然、と醜悪な笑みを浮かべて男は群青色の上着から銀色に光る短い刃物を取り出す。


ジュードにはもう何も聞こえていなかった。
ただ冷たい床に体温が奪われていく感触。血が滲んだ指先も激痛が走っているはずの下半身も、もう何も感じなかった。



だから強姦者達が気付いていなかった路地裏へ近付く足音にも、気付かなかった。















最初に慌てて泣きついてきたのはエリーゼだった。
仲間達の集合場所である町の宿。いつもは誰よりも早く到着しているジュードが日が暮れても姿を現さないのだと。

年頃の少年が追われる身であることも忘れて町で何か興味のあるものを見つけたのかもしれない、とも考えられるがあの真面目な少年がそんな理由で仲間を待たせるとは考え難い。

だとすれば考えられる可能性は二つ。
追手に捕えられてしまったか。お人好しがまたしても祟って面倒事に巻き込まれているか。

どちらにせよあまり良い状況ではない。たまの息抜きにはと珍しく個人行動を全体で許可したのは良くなかったのかもしれない。



宿屋から飛び出そうとしたミラやレイアを止め、思慮深い年配のローエンへと女性陣の見張りを頼む。
これ以上状況を撹乱させるのは良くないと理解している彼はそれを受諾してくれた。


入ったばかりの宿屋を後にし、アルヴィンは記憶を辿ってジュードを最後に見た場所へと駆け出した。






人混みの喧噪。陽が沈み夜に向かう今の時間は昼間とは異なる雰囲気の人間が増えている。
最後にジュードと別れたのは人通りの多いこの場所だった。
こっそり後をつけようと思ったが、人波に揉まれた直後、小柄な少年はすでに姿を消してしまっていた。

そもそもあの時見失ってなければ。今になって胸騒ぎが止まらない。


路地から聞き覚えのある悲鳴が響いたのはそんな時だった。ほんの微かな、聞き間違えでもおかしくない遠く小さな音。

それでも身体は思考するより早く動いていた。
明かり一つ無い闇の路地を駆け抜ける。少年のものではない他の人間の声も近付いていく。


狭い路地を抜けて迎えたのは多少ひらけた空間。漂う独特の臭い。薄汚れた様相の複数人の男と―――床に倒れ伏す、漆黒の髪の少年。



「ジュード」



疑いようが無かった。一糸纏わない姿でも、彼を見間違うはずが無かった。

白い身体に銀色に光る何かが近付いている。
突き立てられる刹那、鈍色の銃弾がそれを勢いよく弾いていた。

「ひいっ!?」

響く銃声と、からりと落ちた刃物の音に男達は情けない声をあげて驚き飛び跳ねた。
少年へと向けられていた視線が全て銃声が生まれた方向、突然の乱入者へと注がれる。
男達は暗闇の中で何やら口々に喋っていたようだったが、アルヴィンにはそんな無駄な情報を取り入れる時間すら惜しかった。


大振りの剣を担げ、まだ銃口から細い煙を吐いている銃を闇に向けて構えた。









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