固く閉ざされた扉の前を横切る足音が聴こえるたび、潤んだ蜂蜜色の瞳がその扉へ警戒の視線を向ける。
その度に熱を孕んだ頬へとわざとらしく音をたてて口付けをしてこちらへと意識を戻した。不安そうな表情はすぐに快楽に溶ける。これで何度目のやり取りだろうか。

窓の外側で響くスポーツに興じる生徒達の健全なかけ声と、窓の内側で奏でられる不健全な淫らな水音はひどく対照的だった。




今やただの倉庫と化した殆ど使われない準備室は誰も掃除していないのか埃に塗れている。
背の無い壊れた椅子や古い書物の数々はいつからこの部屋に隔離されて眠っているかは知る由も無いが、人の立ち寄らない場所として今の自分達には都合の良い場所だった。

自分は別にトイレでもいっそ庭でも何処でも構わなかった。本人は無意識だろうが、煽られて湧き上がる熱を処理しないまま午後の授業を迎えるのは辛い。場所などこの際どうでも良かったのだ。
しかし愛しい生徒に猛反対されては流石に考える。よく考えてみれば他の人間に見つかって困るのは寧ろ教師である自分の方だと気付き、少しばかり反省した。

そして限られた昼休みの時間内に済ませる為に教師権限を使い、この準備室の鍵を持ち出した。校長が訝しげな眼差しでこちらを見ていたが結局何も言われなかった。




清き学び舎で淫事を行っていると自覚する度に、背徳感にぞくりとした快感を覚える。
しかしジュードは決してそうではないらしく、準備室の前を誰がが通る度にそちらを気にするのだから行為に集中して欲しいと思う。
準備室に二人で入る時には周りには恐らく誰も居なかった。そして内側からしっかり施錠したため殆ど心配は無いというのに。


埃塗れの床では汚れてしまうだろうと半ば強制的に自分の上へと乗せた細い身体。
流石に全て制服を剥ぎとる訳にもいかず、上は着せたままだがYシャツから覗く白い肌がひどく艶めかしい。赤いネクタイを緩め、ボタンを丁寧に外していけば胸の飾りまでもが露わになる。

そして何度目か分からないが再び扉の方に視線を向けたジュードの意識をこちら戻す為に、頬ではなく柔らかい胸の赤い芽に口付けた。


「っあ、」
「こっちに集中してくれよ、優等生」
「だ、だって…――ッぁ、あんっ…!」


触れられて勃った胸の飾りを唇で挟んで、歯は立てずに唇の圧力だけで刺激するとそれだけでジュードは悶えた。
気紛れに舌先で芽の先端を掠めるように舐れば細い腰がぷるぷると震えて、既に挿入されているものを締め付けてくる。愛しい人の感じやすい場所などずっと前から知っている。

「ッ…、そ、早く終わらせたいならしっかりやんなきゃ」
「ふぁん…!しゃ、喋んないでっ…やあぁ…!」

胸の飾りを口に含んだまま喋ったのがまた新たな刺激となり少年の甘い声が狭い準備室に反響した。
つい大きくなった声にジュードは頬を紅潮させたまま顔を青くする。今のは外に声が漏れたかもしれないと思ったのだろう。今更口を噤んだところでどうにもならないが。




こちらが胸から口を離せば、小さな顔を恥ずかしそうに肩口に埋めてきた。
自身は先走りの蜜を滲ませながら勃ち上がり、後孔に他人の一物を受け入れている卑猥な姿ながらも、その仕草はとても愛らしかった。

「大丈夫だって。誰も気付きやしないって」

ふわふわとした漆黒の髪を梳きながら宥めるように頭を優しく撫でる。
柔らかな手触りは相変わらず癖になる。唇を寄せれば、仄かに鼻腔をくすぐるのは揃いのシャンプーの香り。昨晩は久しぶりに家に泊めた事を忘れていた。


「…どうなったって、知らない」

顔を埋めたまま拗ねたようにジュードは呟いた。怒気を孕んでいない事にほっとする。
些か機嫌はよろしくはないようだが、その呟きは肯定を示していた――そもそも既に挿入しているのだから肯定も何もない気がするが。

頬に手を添えて上を向かせればそこにはやはり拗ねたような幼い顔があった。
その形の良い唇に口付けて、より深いものを与えれば少年は喘ぎながらも拙い動きで舌を絡ませてくる。口の端から伝い落ちた唾液は最早どちらのものか分からない。
そしてそれが皮切りになったかのように、若い蕾に穿たれたものの律動は再開された。昼休みと称される時間はあと半分も残されていない。





「ッぅん、ふぁ、っあぁ…!」

悩ましげな声と卑猥な水音が重なり合って淫らな音楽が鼓膜を震わせる。心地良い音楽と思うのは錯覚ではない。
煽られて熱く固く勃ったものをすっぽりと収めたジュードの内部は蕩けそうなほどに熱い。このまま溶けてひとつになるのも悪くないと非現実に浸る。
甘い喘ぎが増せば後蕾は膨張した一物を締め付け、圧迫感から更なる喘ぎを生み出してしまう。


「はぁっ…ふあぁ…!おく…ッ」
「ん、何?ジュード、くん…っ」
「奥ばっか、ぁ…あつい、よぉ…!」


首を横にゆるゆると振って訴えるジュードの瞳から生理的な涙が流れ落ちた。
体勢的に狭い後孔が熱の塊を深く呑み込んでしまう形となるのはほぼ必然である。硬い先端が奥を激しく擦ってしまう。

辛いのは可哀想だが、埃塗れの床の上には壊れた椅子の木片も散らばっている。その上に寝かせて綺麗な肌に傷を付けるのが嫌だった。
準備室の壁に掛けられた時計は期待していなかった通り沈黙している。白い身体を抱いたまま腕時計に視線を落とすと残された時間は十分も無い。


「悪い。…良い子だから少し我慢、な」
「う、ん…」


タイムリミットが近付いているのを察したのかジュードは熱い吐息のまま従順に頷いた。
先程まで見せていた不機嫌はいつの間にか見る影も無く、頬を撫でる手に甘えるように身を委ねている。多分それも無意識なのだろう。
びくびくと震える指先が白衣をしっかりと握りしめ、間も無く訪れる刺激を待ち構える姿がまた愛おしかった。



「――あっあっあっ、んぁッ、ぁ!」

激しい律動に嬌声はより艶を増し、声を押し殺す事を忘れたのか喘ぎは止まらない。
単純な運動の中に時折、ぎりぎりまで抜いて一気に奥を穿つ動きを加えるとジュードは白い喉を反らせて身体を震わせた。
先程までは先端に露を結んだ程度だった先走りの蜜も、今や際限なく溢れさせている。指を絡ませると確かな熱を感じた。


「ひぁあッ、アルヴィンそこ触っちゃ…!」
「ん、抜かないと辛いのはおたくの方だぞ?」
「でもっ…ふぁあ!っぁん、やぁ!」


いやいやと首を振っていてもジュードが本気で嫌がっていない事は分かっている。本当に拒否する気があるならばもっと本気で抵抗しているだろう。
この優等生は他の人間が思うよりずっと素直じゃない。ジュードがそんな一面を見せる事が出来る数少ない人間の中に自分が含まれていると思うと優越を感じずにはいられない。

先走りの蜜の滑りを借りてジュード自身をやや強めに扱き、暴虐的なまでに熱い後孔の最奥を何度も突き上げた。


「あっ!あぁっ、あ、ぁん!あるび、んっ―――っふあぁぁッ!」
「――ジュード…ッ!」


甘ったるい嬌声と共にジュード自身から熱い白濁が吐き出された。手では受け止めきれなかったものがこちらの衣服の上に滴り落ちた。
そしてそれと同時に、よりきつく締め付けてくる後孔に搾り取られるように自分も欲望をジュードの中へと注ぎ込んだ。

心も身体も確かな熱に満たされる、そんな幸福を感じながら。















淡々と響くチャイム音をどこか遠くに感じていた。窓の外ではきっと生徒達が始業に間に合うよう焦る声が聴こえるのだろう。
隔離された世界、埃塗れの準備室という色気の欠片も無い場所で二人行為の余韻に浸っていた。



「…ばか。最低」

――が、沈黙を破ったのは甘い言葉のひとつではなく、ジュードの拗ねたような声。

その意味は問わずとも分かる。自宅でもない場所で行為に及び――そこまではよかったのかもしれないが――あまつさえ中出しまでしてしまった。
行為に興奮した頭では自制出来ずに、獣のように欲望に身を委ねてしまったせいで、昼休み終了の合図の音色を聴いてもこの場所から動けなくなってしまったのだ。

「…優等生もノリノリだった癖に」
「っ…!」

からかうような口振りに思い切り頬を抓られるのを覚悟したが、返ってきたのは頬を染めて視線を逸らす可愛らしい反応だけだった。
唇を寄せれば反射動作のようにジュードは柔らかい唇を押し当ててくれる。本当にこの少年は素直じゃない。
そんなジュードの反応にまた下部に熱が集まり始めたが、流石にこれ以上は許されない。大人として、教師として。



欲を誤魔化すように開け放った窓からは新鮮な空気が入り込んできた。
行為で火照りきった肌を撫でる風がとても心地良かった。


窓の外は相変わらず生徒達が慌てて教室へと戻って行くのに、すぐ傍にいる優等生だけは違う。ただ自分のものだけの優等生。
甘美な響きはまた欲を深めてしまう事を分かっていても、自分がこの愛しい少年を手放す事は多分これからも無いのだ。










10万打記念企画でアテネ様よりリクエスト「学パロでアルジュ裏」。リクエストありがとうございました!
ただひたすらイチャついているだけ。学パロはやはり楽しいですね…!
ジュード君は誰かに見つかってしまうのを恐れているだけで、学校で行為に及ぶ事自体は満更でもないようです。
ローエン校長は勿論気付いてたりしますが、アルヴィン先生は減俸程度で済んでいます。



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