さながらたった独り聖域を侵略する孤高の戦士のように槍を携えるのはこの僕。
背徳に高揚する心は果たして悪だろうか。けれども誰が咎めようとも己の信念を貫き通す限り、どんな行為も自分にとっては正義に等しい。
聡明な戦士は長い時間理性を保っていたが、それを失ってしまえば耐えた分だけ反動は大きくなる。
制御不可能、つまりは本能と欲に全てを委ねし獣のような狂戦士。今の僕はまさしくそれだ。
暴発寸前の槍をぴくぴくと震える後蕾へ宛がうとジュード先生は息を呑んで潤んだ瞳を大きく見開かせた。
滾りに滾った僕のモノの熱を伝えるように先生のぬるついた蕾を先端で小刻みにつつくが、触れるジュード先生の後孔の方がずっと熱い。
「っだめ…だめぇ…」
涙でぐちょぐちょの顔のまま首を横に振って拒否を示すジュード先生。
最後まで快感を肯定したくないらしい。往生際が悪い。気持ちいいと一言言えば僕は報われるのだけれど。
ただし認めたくないというのは心の問題で、正直な身体は僕を急かすように脚を淫らに開いている。
収縮を続ける後蕾が僕の槍の先端へと自ら絡んできて、挿入されたのかと勘違いしたジュード先生はやだやだと啼いた。自分で迎え入れてるんだよ、淫乱なジュード先生。
あまりじっくり時間をかけても彼が苦しむ時間が長引くだけだ。
手早く済ませて、自分の白濁塗れの身体を洗ってあげて、服を着せてあげて――その後はどうしようか。
監禁など恐ろしい事は考えていない。けれどジュード先生との別れの時間が近付いていると思うとやはり寂しい。少しでも一緒の時間を長引かせたいと思ってしまう。
それでも僕は大人としてしっかりしなきゃいけない。僕の我が侭は終わりにしてジュード先生の為に任務を遂行するのだ。
ほんの先端だけ挿った一物を僕は性急にジュード先生の後孔へと穿った。
「ッあああぁっ―――!」
悲鳴が部屋中に反響する。僕の大事なモノがジュード先生のナカにずぶずぶ呑み込まれていく。
指ではあまりしっかり慣らしていなかったので心配だったが、玩具と何よりも媚薬のおかげで弛緩した後蕾は僕のそこそこ立派な一物を難なく受け入れていた。
「は、熱…ジュード先生の中、とろとろしてる」
「いやああッ…あ、抜いて、ぬいてえぇっ!」
「…先生がそう言うなら、それでもいいけど」
「え…?―――ッん!ふあぁん…!」
抜いて欲しいとのご要望だったから僕は抜こうとしてあげた。そしたら抜けていく感覚に今度は喘いでしまう。
しかもジュードくんの中で熱い内壁が僕の熱い楔を逃がすまいと言わんばかりに絡みついてくるのだ。また心を身体が裏切ってしまっている。
「もう…本当は抜いて欲しくないんでしょ?善いとこいっぱい突いて欲しいんでしょ」
僕の太くて硬い棒はその役にうってつけだ。
それを証明する為に、一度は抜くふりをした一物を再び穿つ。今度は先程よりずっと奥に。
「ひっ、ぅああぁッ!」
「痒いとこってここら辺かな。だったら指じゃ届かないよ」
「っぁん!やああぁ、奥っ、また変」
「変、じゃなくて。これが気持ち良いっていうんだよ」
その証拠に萎えていた先生の一物はまたまた元気になっていた。媚薬のせいでもあるだろうが若さが羨ましい。
僕のように歳をとったらそうもいかない。だから一回一回の行為を大事にしたいのだ――理性を失った獣のような今の僕はそんな事は忘れているが。
いきり立った熱の塊が狭い後孔で激しく抽挿を繰り返す。
圧迫感に苦しむ悲鳴に時折甘ったるい喘ぎが混じるのは、恋人でもない人間に犯されているこんな状況でも感じている証拠。
先生が触ってもらうのが大好きな赤い胸の飾りを気紛れに弄れば、可愛い喘ぎとともに後孔が僕自身を締め付けた。
「んぁあっ…!あっあっ、ぁんっ!」
「っは、可愛い…」
大きくなる嬌声は部屋の外に響いている可能性は高い。女の子のような甲高い声に何人が年端もいかぬ少年のものだと気付くだろう。
激しい律動にジュード先生はもう悶え喘ぐことしか出来ない。思考という不毛な行為を手離せば、あとは全身で快楽を享受することしか残らない。
蕩けるような快楽に先生の口の端からは拭えない唾液が垂れ続ける。最早清楚な白衣の天使とは程遠い淫らな姿は僕をさらに興奮させた。
滑らかな肌触りの細い腰を掴んで、何度も最奥へ熱い楔を叩きこみ続けた。ジュード先生の善い所を掠めさせるのも忘れずに。
「ぁうッ!ぁ、あっあっ!」
「ッ、最後にきくよ…ジュード先生、気持ちいい?」
「ふぁん、っあぁ、きもち、い…――っひああぁんッ!」
虚ろな瞳で頷いた。天使が完全に堕ちた瞬間と薄まった白濁が吐き出されたのは同時だった。
そして搾り取るような激しい締め付けに僕も遂に達してしまう。大量の熱くて濃いものがジュード先生の中に満ちていく。
恍惚とした堕ちた表情でジュード先生は意識を手離した。
その唇が最後に紡いでいたのは名前だった。ただし先生の名前でも僕の名前でもない。
ここにいる誰でもない者の名前を愛おしそうに呼んでいた。行為の最中に蜂蜜色の虚ろな瞳が見詰めていたのはこの場所に居ない愛しい誰かだったのだと気付いた。
嫉妬の炎に突き動かされるほど僕は感情的でもなければ若くも無かった。
ただジュード先生が僕の事を忘れなければ、それだけで僕は幸せなのだ。
結果から言えば、僕は結局病院のブラックリスト入りを果たし病院の出入りを禁止された。
あの時は衝動的に彼を連れ出してしまったけれど、頭を冷やしてよく考えなくてもそれは誘拐同然だったからだ。
普通ならば通報され軍に突き出されていただろう。しかしそうならなかったのは――驚くことなかれ、ジュード先生のおかげだった。
"倒れた自分をあの人は動揺して連れ出したけれど、その後しっかり看病してくれた。"
あれだけのことをされておいてジュード先生は僕を庇った。正直僕にとっても信じがたかった。でも現実なのだ。
病院に多大なる迷惑をかけたという点においては出入り禁止を避けられなかったが、社会的に排除されるのだけは避けられた。
では何故ジュード先生はこんな僕を庇ったのか。
「ジュード先生、お疲れ様」
「……こんばんは、…」
代診が終わり病院から出てきたジュード先生を僕は入り口付近で迎える。今日もジュード先生は疲弊しているみたいだった。
僕とジュード先生は残念ながら恋人ではないため手を繋ごうとしても肩を抱こうとしても振り払われる。
ただし僕の家の扉を開けて、机の上にある、例の液体が入った一つの小瓶を差し出せば彼はそれを素直に受け取ってくれる。
寧ろ表情には出そうとしないが喜んでいる。それが目的のようなもので、僕を庇い今でも会い続けてくれる何よりの理由だからである。
堕墜した天使が元に戻る事など出来やしない。堕ちるところまで堕ちたらあとは昇るだけなんて生温い事あるわけないのだ。