軋んだ音をたてて開くクローゼットの奥から小型の木箱を取り出す。
それを小脇に抱えたままベッドの傍に戻れば、ジュード先生は口から熱い吐息を吐き出して短い呼吸を繰り返していた。
ジュード先生自身はゆるく勃ち上がり始め、先端からは先程よりもさらに先走りの蜜を零している。殆ど触っていないのに媚薬の効果は凄まじいみたいだ。


それを見た僕は嬉々として抱えた木箱の蓋を開いた。
質素なのにどこか温もりがある木箱とは対照的に、中に並ぶのはひどく淫らな器具の数々。
いつか訪れるこの日の為に、安い給料で様々な玩具を買い揃えて置いた。ジュード先生の為ならこんな出費も悪くない。寧ろ喜んでしようじゃないか。



木箱の中からまず取り出したのは、親指ほどの大きさの雫型をした桃色の器具。
可愛い見た目をしたそれには長いコードが伸び、コードの先には小さな箱のような操作盤が繋がっている。所謂ローターという玩具。

ジュード先生のすらりと伸びた脚を膝を軽く折って外側へ開かせながら、形の良い双丘の奥にあるものを空気に晒す。
硬く閉ざされたそこは、まさに侵してはならない神域のように思えた。この場合は正確には犯して、だが。
しかしこの背徳感に僕はぞくりとした快感を覚えていた。止まらない、今更止められるわけがない。

「今僕が君を苦しみから解放してあげるから」


顔がにやつく。違う違う、邪な気持ちなんてこれっぽっちも無い。








もう一つ木箱から取り出した小瓶の蓋を外して、その中身の程良い粘度の液体を雫型の器具にたっぷり絡める。
丸みを帯びたフォルムの輪郭をなぞって滴り落ちた液体がベッドのシーツに染みを作った。

閉じた蕾に潤滑油をたっぷり纏ったローターを軽く押し当てる。
まだスイッチも入れていないというのに、冷たい感触のせいか他の感覚のせいか、それだけでジュード先生の身体はびくりと反応する。


「あっ…、ぅ」
「ジュード先生…」


感度が良すぎる。熱い吐息と共に漏れる艶っぽい声にこちらの下半身がどんどん熱くなっていく。
このジュード先生の可愛らしい後蕾の中に僕のモノを挿れたらどんなに幸せになれるだろう――不意にそんな事を考えてしまう。


そんな邪な念を振り払うように、入り口の前で止まっていたローターを後孔へと押し込んだ。

「っあ」

細い身体が跳ねると同時にジュード先生の後孔は異物の侵入を拒むように、雫型の器具を締め付ける。
しかし反射的な抵抗も虚しく、潤滑油の滑りを借りたローターは僕の指に押されてジュード先生の中へと納まってしまう。
相変わらず侵入を拒もうとする後孔が僕の指を締めるように纏わりついてくる。中は蕩けるように熱い。


天使のような少年の後蕾から伸びた桃色の長いコードがひどく卑猥だった。
頬を桜色に染めて、胸の飾りを真っ赤に勃たせて、少年自身からは透明な蜜をだらだら流して。媚薬のせいとはいえ白衣の天使もまた欲に忠実な生き物だと実感する。


だから頑張り屋さんな先生を元気にしてあげる人間が必要なのだ。それが今の僕。
コードの先に繋がった小型リモコンのスイッチを回すと、間も無く低い振動音が安い部屋の中に響き始めた。







「っぁ、ああ…ぅ、」


ジュード先生の口から漏れた悩ましげな声が低い振動音に重なる。
未だ目を覚まさない彼はベッドの上で内部から伝わる弱い振動にびくびくと身体を震わせているだけ。


「全然足りないかな、先生?」

ダイヤルを弱から中へ回す。ヴヴヴ、と振動音が僅かに彼の後孔の中で大きくなる。

「ぁ…――ッん! ぁ、あぁうっ…!」


より激しくなる内部の刺激に細い身体が大きく跳ねて、ジュード先生は悶えた。
刺激の強さに比例して漏れる声は艶めき、勃ち上がる自身からは先走りの蜜が溢れ出ている。



中を犯し続ける刺激を緩和しようと彼は無意識に身を捩り始めたが、それを妨げるように僕はジュード先生の上に跨った。

腰のラインをなぞり、胸から首筋へ。白く滑らかな肌に指を這わしてその感触を楽しむ。
対の胸の飾りを指先が掠めた時の反応は他の場所に触れる時よりも大きい。やはり元からここが感じやすいのかもしれない。
こんな場所が敏感なんてまるで女の子のようだ。可愛いから全然問題ないが。



「や、っぁああ…!ぅんっ、ぁん…!」


上からの重みで身体を上手く動かせずローターが内部から与える刺激を逃がせない上、僕が胸の飾りをやわやわと弄り続けて加えられる刺激に、ジュード先生の口からさらに大きな喘ぎが漏れていく。
その口の端からは快感に拭えない彼の唾液が垂れていた。頬は病的に赤く染まりきっている。


「ああ、君はなんて可愛いんだろう…」


天使の甘い喘ぎが部屋に満ちて幸せな気分になった僕は、ジュード先生の上に跨っていた身体を前に倒していた。
右手は小さな芽を摘み弄ったまま。左手は彼の熱を持った頬に添えて―――甘い声を紡ぐ唇へ口付けを落とす。


ああ、何だか甘い匂いがする。これがきっと天使の味なんだ。


そう思った次の瞬間には開きっぱなしの口へ舌を突っ込んでいた。

「ッふぅっ!ぁふ、んふぁっ…!」

甘い。
くちゅくちゅと僕は自分の舌でジュード先生の舌を絡め取り、吸う。咥内を探るように夢中で舐っていた。
甘くて堪らない。美味しい、もっと。


天使との接吻という禁忌を犯した事に罪悪感を感じているのに、止められない。
呼吸の合間に僕の顔へとジュード先生の熱い息がかかる。目尻には息苦しさによる生理的な涙。

長い睫毛がふるりと震えた。涙の雫が目尻を伝って流れ落ちたと同時に、瞼がゆっくりと開かれて蜂蜜色の瞳が姿を現した。










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