傍観者 (コンウェイ)



TOI/コンウェイ


流れる血を見た。
それは喉を焼くようなむせ返る熱風と激しい音をたてて弾ける溶岩の世界。
それは淀み無く歪んだ刃が無垢の白を穿つ情景。
それはひとつのターニングポイント。
これも一つの確定されていた世界。



「ルカッ!」

そう最初に叫んだのは誰だっただろうか。
ただ一つだけ間違いないことは、それが僕ではなかったこと。
次々と悲鳴が反響する。狼狽える仲間達を制する最年長者の声さえ微かに震えていた。


彼らに深く干渉する事は許されない。ただ傍観を貫き、きたるべきその時まで彼らに沿う事しか出来ない。
物語の行く末。彼らが辿る道。
既に運命付けられているそれに干渉すれば、自分の目的も未来さえも破綻する。


――もし、刃がルカくんに届く前に自分があの男に止めを刺していたら?

愚かな話だ。そんな事が許されるはずも無いのに。
そんな夢想を一瞬でも考えてしまう自分は既に彼らとの距離感を誤っているのかもしれない。


そうでなければ、こんなにも言いようの無い正体不明の感情と罪悪感に、胸が潰されるような感覚に苛まれるはずがない。


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