愛と情と ※ (アルジュ)




ただの冗談だった―――否、冗談でも叶えば幸運。その程度のものだった。

軍から追われていた二人は一文無し。恩を売ることで上手い事金品を搾り取れるかと目論んだがとんだ肩透かしだった。勿論、結果的に金品以上の成果はあった訳だが。




金で払えないならば、別の方法――勿体ぶらずに物申すなら――身体で払ってくれても良い。


自分が気紛れにそう告げたのは女性の方。少年嗜好も、そもそも同性趣味も無かった。
それなのにもう一人の連れである少年は慌てて女性を庇うように、冗談とも知らずに必死になってとんでもない事を提案したのだ。


自分では代わりにはならないか、と。


そこから何かが壊れ始めた。理性か、嗜好という名の扉かはよく分からない。
何かがおかしくなって少年を抱いてしまった。容姿こそ服装を替えれば少女を錯覚してもおかしくないほど可憐だったが、男を抱くのは初めてだった。少年はさぞ苦しかっただろう。簡単に己の身を犠牲した報いだ。

自分も慣れない事は苦しかった――それなのに不覚にも、また身体を重ねたいと、思ってしまった。




そこに愛は無い。自分にとって少年は都合の良い欲の捌け口であり、少年は女性を守るために甘んじて熱い禊を受け入れている。
少年はどんなに激しい、どんなに趣味の悪い行為でも喘ぐだけで嫌とは絶対言わない。そして気持ち良いとも絶対言わない。


今夜も嬌声に酔いしれて、欲のまま少年を穿つ。途切れ途切れの短い喘ぎは甘ったるく鼓膜を刺激する。


「――優等生、気持ち良いか」


気付けば口走っていた。
こんなことは二人の関係には必要ない、今まで排除していた要素だったのに。
少年は驚いたように潤んだ瞳を丸くした。自分もまた変な顔をしていただろう。

そこから何かが変わり始めた。

本当にそこに愛は無かったのだろうか?





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