つなぐ ※ (アルジュ)
TOX/アルジュR15
甘く蕩けるような声を漏らす口も含めて、少年は自分の顔を両手で覆い隠している。
「ジュード君、ちゃんと顔見せろ」
何度そう頼んでもジュードは必死に首を横に振るだけで、成果はない。 覆い隠している手を引き剥がそうとした事は何度かあるが、精一杯の抵抗に成功したためしも無い。
後ろからでは顔が見えないから恐い。 だからといって正面からでは顔を見られて恥ずかしい。
それが少年の言い分である。 矛盾というより、少年にしては珍しい自分勝手な言い分であるように思えた。 そんな我が侭を許可してしまった自分も自分だが、顔を見せてくれないのはやはり寂しい。
「アルヴィン…ある、びんっ…」
こんなに可愛く自分を呼んでくれる少年の顔を見られないなんて。
気紛れに顔を覆い隠す手を掴めば、相変わらず顔を見せまいと抵抗してくる。 いつもなら諦めるかしつこく攻め続けていた。
「…?」
ジュードの抵抗が止まる。 絡んだ指と指を、目を丸くして見詰めていた。
理解不足だったのは自分の方だったと気付き申し訳ない気持ちになる。 ただこれだけで良かったのだ。これだけでジュードの不安を取り除けたのだ。
ようやく見せてくれたジュードの顔。 余裕の無いその表情の中、目と目が合えば少年は僅かに微笑んだ。
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