自由主義者の欄外余白 | ナノ

27論


オーキド博士とマサキが来訪して、図鑑制作も大分進展したようだ。
俺とマサキは一度だけバトルをした。マサキはバトルは得意じゃないからと物凄く渋っていたが、博士二人に観察したいと言われるとさすがに断れなかったらしい。

「よっしゃ、どうせやしわいの相棒見せたるで!」

そう言って地面に投げられたボールから出てきたのはユンゲラー。
ケーシィの時にゲットした、マサキの一番最初のポケモンだと聞いた。
俺の方からはカフカにお願いした。アカギと会ってからバトルに乗り気なカフカはあれから順調に育っている。レベル差も丁度良いだろう。

結果的にエスパー同士、しかもテレポートの応酬となったのは少し面白かった。
後程聞いた話だが、マサキのユンゲラーは今こそ進化して落ち着いているものの、ケーシィだった頃は何も無くても其処ら中を頻繁にテレポートしていたらしい。
何を隠そう、それこそが転送システムを思い付く切っ掛けでもあったとか。

そして、そのバトルで。

「――きるるりっ!」

なんと、カフカが遂にキルリアに進化した。
アカギのお陰でそこそこ鍛えられていたからもうすぐかなあとは思っていたけど、このタイミングだったので博士達やマサキは大興奮で、バトル終了後充分な休憩を挟んだらすぐに観察に夢中になっていた。
この手の人間が三人も集まると勢いが凄くて圧倒されてしまった。興奮していてもポケモンの気遣いだけは忘れないのは流石だけどねえ。

そんな出来事も挟みつつ、あっという間に二人が帰る日が訪れると、再びミオまで二人を案内し、何時かカントーにも来てほしいと言って船に乗るのを見送った。
カントーかあ。やっぱり初代は思い出深いんだよねえ。故郷を探すのに関係無く行ってみたい気持ちは強いなあ。

連絡先は貰っているし、何時かカントーに行く機会が有れば訪ねてみよう。
その頃にはフィトもバッチリ進化させておきたいねえ。頑張って期待に応えよう。



それからは、博士のお使いをしながらフィトを鍛える日々が続いた。
コウキくんの成長スピードは相変わらず凄まじく、以前よりも頻度は減ったもののミオの図書館には定期的に訪れている。

図書館に行くと、たまにゴヨウを見掛ける事があった。その時はフィトのバトルの練習相手になってもらっている。ゴヨウのポケモンは進化すると耐久に定評のあるドーミラーで、長時間の練習には打って付けだったのだ。
フィトは進化願望もある為かエルディ以上にバトルに積極的なのだが、マサキから譲り受けた時点ではこういった実戦経験は無かったらしく、今はバトルの空気感に慣れさせている段階だ。
相手のドーミラーは進化前とは言えレベル差を抜きにしても非常に硬い為、自然とバトルは長引き、最後は大抵フィトのスタミナ切れで終了した。手を抜かれているお陰で今は対抗出来ているけど、本気を出したら一瞬で倒されるんだろうなあ。

「そういえば今度、カロス地方へ観光に行くんですよ」

一息ついた頃、ゴヨウがパンフレットを見せながらそう切り出した。
カロス…俺の知らない地方だ。どれどれと広げてみると、欧風の華やかな街並みの写真が並んでいた。

「美しい緑と芸術の街、かあ」
「人の技とポケモンが共存している、最先端の地方とも言えますね」
「お土産話、楽しみにしてるねえ」
「はい!」

こういうのを読んでると、のんびり旅に行きたい欲求が強まるなあ。この世界では主流なトレーナーの修行の旅っぽいのじゃなくて、ひたすら観光して回るような。仕事辞めて世界一周とか、元の世界にいた頃のちょっとした夢だったんだよねえ。
…俺の場合は、お土産話が増えすぎない内に故郷を見付けたいんだけどねえ。

「…実は此処、ホウエンから然程遠くない位置にある地方なんです」
「え?」
「なるべく沢山、海の写真を撮ってきますね。今回乗る船の経路から見える範囲に限られてしまいますが」

そう言って、ゴヨウは穏やかな笑みを深めた。
以前、ホウエンの近くに俺の故郷があるのではないかと推理したゴヨウだ。それの意味するところは、すぐに察せられた。

「…ありがとう、ゴヨウ」
「お土産話、楽しみにしていて下さいね」
「ふふ、うん、そうだね」

彼にしては珍しくいたずらっぽい顔に、心を解された気がした。



マサゴの研究所に戻り、ナナカマド博士にカロス地方の話をした。
すると意外な繋がりが博士の口から明かされた。なんと、博士の教え子がカロスに研究所を構えているのだそうだ。俺が研究所に来る数年程前までは、此処で博士の助手をしていたらしい。

ゴヨウに教えてもらった地理と例の神様の発言的に、俺の故郷がカロス周辺にある可能性が高いことを話すと、博士はカロスに居る博士に連絡を取ってくれた。
彼の名はプラターヌ博士と言って、島の捜索を快く引き受けてくれた。
研究の合間に何処にあるかも解らない小さな島を探すなんて結構大変なのでは…と遠慮していたが、元々各地の辺境へ赴くような研究をしていたらしい。

これは余談だが、オーキド博士のお孫さんも留学でカロスに居るらしい。いやあ、こんなところで主要キャラの動向が知れるとは思わなかったよねえ。今って原作の何年前なんだろう。少なくともダイパ冒頭まで三年以上はあるんだよねえ…。

『やあ、君が噂のイノリくんだね!例のタイプ相性表を見たよ、君と君のお友達の二人で新しいタイプを見つけてしまったんだってね!』

俺と話がしたいと聞いたので受話器を受け取ると、物凄くベタ褒めされた。
以前、友達と作ったと言って例の相性表を博士に見せたところ、検証を重ねてから発表した方が良いと判断され、彼等と此処の研究員の間でのみそれは共有された。
少なくとも図鑑が対応するまでは、俺からは口止めされていた。ただの子供である俺達が今までの常識を覆すような発見をしてしまったのだ。下手に言い触らすのは危険だと、ナナカマド博士が他の博士達と相談して決めたそうだ。
アカギに関しては既に旅立った後だったのでどうしようもなかったが、彼もあまり積極的に語るタイプではないので大丈夫だろう、と信じている。

話がずれたが、何が言いたかったのかというと、プラターヌ博士は元々俺のことを知っていて、その上で評価してくれていたからこそ協力してくれたのだった。
それに関しては大変助かるし有難い。有難いのだが…タイプ相性表もそうだけど、他にも色々とやらかしてしまっている所為か、最近やけに俺の評価が良すぎる気がするんだよねえ。愛され補正の効果も大いにあるんだろうけど。
…まあ、協力者が多いのに越した事は無いから良いか。信頼は出来る人達だし。



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