ネタ帳 | ナノ
九話
私七歳、兄九歳。
あれから何事も無くのんびり小学生ライフを満喫中である。

小学校に通えるのは何故か。
親の残したお金がたんまりあるからです。
元々大富豪だったらしいけど、禊ちゃんが生まれた頃から大赤字が続いてたんだって。
借金取りの人達も来たりしたけど、禊ちゃんを見て一斉に逃げ出していったよ。受けるわー。
だから赤字は全部チャラになって、大きな資産が手元に残りました。いえい。

さて、今は教室でお昼休みなう。
私の周りには何故か人が一人も居ない。
禊ちゃんの所為だね。絶対禊ちゃんの所為だ。

全くあの兄と来たら、私が小学校に入った途端某お魚兄妹の長男に負けず劣らずのシスコンになってしまったのだ。
軽く問いただせば、『愛しい妹と一緒に居たいと思うのは当然だろ』、という事らしい。
お陰で下の学年であるこの教室にもよく来るようになり、折角出来た友達も離れていってしまったという訳だ。

ま、此処のくそつまんねー人間共には興味無いから別に良いけどね。

「『雪』『僕にもスープちょうだい!』」
「ほいほい」

木曜日、今日も禊ちゃんは私の所へ来て給食を頂こうとした。
今週は私が給食当番。白い割烹着を身に着けてお椀にスープをよそう。

自分のクラスのがあるんだから自分のを食べれば良いのに、やれやれだ。
しかも私が給食当番の時だけ来やがる。仕事を増やすな馬鹿兄め。

ちなみに給食当番じゃない日は、私が禊ちゃんの教室に行く。
というか禊ちゃんが迎えに来てそのまま連行される。
どんだけ昼を共にしたいんだ兄よ、そんなんだから妹にシスコンだって馬鹿にされるんだぜ。

さて、他の子供達は青褪めて皆失神してしまうから、ご飯やらおかずやらも私が盛ってやらないといけない。
今日はパンだけど、それでも面倒なものは面倒だ。私だってお腹空いてるんだぞ禊ちゃん。
むしろ自分でよそえよと思わなくもないけど。

「『あ』」
「なーに禊ちゃん」
「『うん』『今思ったんだけどね』『僕が雪の給食をよそってあげれば良いんじゃない?』『愛の共同作業的な』」
「やだよ禊ちゃん盛り付け超下手くそじゃん」

そう、このマイナスの底辺は何処までも不器用なのだ。
だから心優しい妹は、このシスコンの為に全て綺麗に盛り付けてやるのだ。

「盛るんだったら自分の分盛れよ」
「『僕は雪が僕の為に愛を込めて綺麗に盛り付けてくれた給食が食べたいんだもんっ』」
「はいはい」

銀のお盆に全て並べてやると、禊ちゃんは嬉しそうにそれを持って私の席の隣に座る。
その席の本来の持ち主は、おかずが入ったバットを前に失神しているので何の問題も無い。

私もさっさと自分の給食を持って行って席に座る。
にこにこと笑顔で待っていた禊ちゃんは、私が来た事を確認するといただきますと箸を取った。
美味しそうに頬張るのは良いけど、あんまり零すのはやめてほしい。
私の席の周囲に被害が出るじゃないか。禊ちゃんが座ってる席の周囲なら別に良いけど。

家に帰れば、夕飯も作らなくてはいけない。
日々の食事も何時も私が作る。というか家事は全て私が担っている。
禊ちゃんがあまりにも不器用すぎて、手伝うのも一切禁止した。

小学生の体にあれは結構こたえるんだぜ。
全く感謝しろよ、お兄ちゃん。


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