ネタ帳 | ナノ
三話
私二歳、兄四歳。
一年経つの早いとか、言っちゃ駄目だよ。

二歳になって、大分言葉を話せるようになった。
そこでずっと悩んでいた球磨川先輩の呼び方。
球磨川先輩は論外。お兄ちゃんとかは何か違和感。
そこで、球磨川先輩の口調を真似して禊ちゃんと呼んだら、なんか大ウケした。ので禊ちゃんと呼んでる。
何が良かったんだろう。真似したのが嬉しかったとか?

禊ちゃんに連れられて、てこてこと歩く。
ずるずるとぬいぐるみを引き摺る音が追いかける。
扉を開けようとすると、がたんと激しい音が響いた。
意にも介せずマイペースに禊ちゃんが扉を開ければ、縄で自分の首を括ろうとする禊ちゃんのお父さんと、それを止める禊ちゃんのお母さん。

「あぁあああぁぁぁあああああぁぁあぁ、」
「やめ、て……もう、やめて……」

あーあ、またかあ。

「『あれ』『お父さん』『お母さん』『何してるの?』」
「っ、あ、んたの、所為よ!!あんたがあんたがあんたが!!」
「『ぐっ』」
「あんたが壊したのよっ!全部全部全部全部全部ッッ!!このっ……、気持ち悪いッ」

だんっ、と床に禊ちゃんの体が叩きつけられる。
凄く痛そうな音。今禊ちゃん大嘘憑き持ってないのに。

「この不幸は、あんたが生まれてから始まったのよ!!」
「『…………』」
「あんたなんか産まなきゃ良かったっっ、ぁあああぁぁああああぁぁ、」
「『…………』」

終始禊ちゃんは口元に笑みを浮かべてその言葉を聞いていた。
私といえば、ちっとも心が動かなかった。

「ぁ、そそぎ、雪……貴方は、貴方は、私を慰めてくれる……?」

え、ちょ、私に振るんか。
ずりずりと這い寄って、縋るように足にしがみつく。
私にどうしろと。

「えっとー……みそぎちゃん、これどうしよう」
「『僕に言われても困るよ雪』」
「っ、どう、して?雪、雪雪雪、貴方は私の可愛い子供よ、あんな化物と違って、私の愛しい」
「んー、わたしはみそぎちゃんのほうがすき」

だって禊ちゃんの母親なんて原作には出てきてないし、特に愛着とか無いし。
いつも遊んでくれるのは禊ちゃんだけだったし、この人達との接点は精々食事時ぐらい。それさえも無い時が多い。
私の母親は、あくまで前の世界で私を産んでくれた人。
今足にしがみついてる女の人は、所詮他人。

「『僕も雪が好きだよ』『世界で一番愛してるさ!』」
「んー」
「……おかしい、絶対おかしい、そうよこの子達は異常なんだわだからこんな、」
「?」
「あなた、病院に連れて行きましょう。この子達はおかしいのよ。箱庭病院に行きましょう。お金なら沢山あるわ」
「…………ああ」

あ、病院行くんだ。やっとか。
めだかちゃんに会えるの、楽しみだなあ。

禊ちゃんの傍らで、うさぎが不気味に笑っていた。


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