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「もしもーし?」

鳴とは別の高校に進学してから早1ヶ月。わたしはわたしで新しい生活にバタバタしていて、それは鳴も同じようだった。
毎日連絡するから!といった彼だったが、最初の1週間はやれ練習きついだの、先輩がめんどくさいだのとメールを寄越してきたが、それはだんだんと少なくなり、新学期が始まってからはほとんど来なくなった。

部活と授業で忙しいであろう鳴に気を使って、わたしもあまり連絡をしなくなった。 わたしもわたしでそれなりに忙しかったのだ。

そんなある日の夜11時。さーてベッドに入ろうかというときに、着信音が鳴った。 あれ、これ中学の卒業のときと一緒のパターンだ。
画面をみてみれば、やっぱり成宮鳴の文字。自然と頬があがっている自分がいた。
なんだかんだで、わたしは連絡がとれないのは寂しかったらしい。

『もしもーし?』
「あ、なまえ!?!?出るの遅いよ!誰からの電話だと思ってんの!」
『あーもう電話でそんな大声出さないで』
「はぁ!?せっかく人が忙しい中電話してあげたってのに!!」
『はいはい。それは嬉しいよ。ありがとう』
「全然気持ちがこもってない!!」

と、ピーピー怒り出した鳴。
あぁ、これも最近全然聞いてなかったな。 鳴1人がいないだけで、こんなに静かになるなんて。

「聞いてんの!?」
『うん…?』
「聞いてねーし!!」

そしてまたピーピー文句を言いだす。だいたいなまえは人の話聞かなすぎ!ぼーっとしすぎ!だのと言っているが、無視だ。しばらく聞いていなかった幼馴染の小言が心地良いと感じる日が来るとはなぁ。

『ね、鳴』
「なに!?」

言いたいことを言い終わったのか、静かになった鳴に、ようやく話しかける。

『電話、ありがとう。鳴の声聞いたら元気になったかも』

「……なに、寂しかったの?」
『……そうかも』

「かも」じゃない。本当だ。鳴がいない生活は、やっぱり物寂しい。だって生まれた時からずっと一緒だったのに。

「俺だって、なまえの声聞きたかった」

練習ばっかり、それが終わっても、先輩たちに気を使う毎日。自分の時間なんて、あんまりとれなかったんだろう。その合間をぬって、わたしに電話をかけてきてくれたんだ。

『そっか。よかった』
「なまえ、今度試合見に来てよ」
「え?鳴出るの?1年生なのに?」
「まー俺ってばすごいからね!」
『ん。教えてくれたら行くよ』
「じゃ、そろそろ戻る」
『うん。おやすみ。…あ、鳴待って』
「なに?」

『おつかれさま』

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そう言ってあいつは電話を切った。 最近忙しすぎて携帯に構ってる暇なんかなくて、でもなまえが気になって。
ようやく少しの時間ができたから電話してみたら、あいつはあいつのままだった。 おまけにおつかれなんて。

俺が欲しい言葉、いつでもくれるから、俺はなまえから離れられない。離れたくなんかないけど。つーか離さねぇし。

明日からも、また頑張れそうだ。
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