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決勝翌日、クラスは秋大優勝の話題でもちきりだった。
久しぶりの甲子園出場が決まったのだ。いつもは女子のクラスメイトとあまり絡まない倉持が、今日ばかりは囲まれていた。

「なまえおめでとう!」
『うんありがと〜!」

わたしもクラスの友人と昨日の話で盛り上がっていた。

「なんだよあいつら…」
「お、倉持やっと解放されたの?」
「いつも絡んでこねぇのに…」
『仲良くなるチャンスだよ』
「…別にいらねぇよ」

昨日のことがあったからちょっと顔を合わせるのは緊張したけど、朝会った時の倉持は至っていつも通りだから、わたしもそうすることにした。

「そういえば御幸くんは?」
『今日は休みだよね?』
「おー」

御幸は今日、大事をとって学校は休みだそうで。なんとなくいつもいる顔がいないのは違和感がある。

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「骨に異常がなかったのは幸いだったが…やはり場所が場所だけに時間がかかるだろう…」

その日の放課後、ミーティングから始まった部活では、御幸の脇腹の肉離れが報告された。

「神宮大会は御幸抜きで戦わねばならない。ベンチ入りメンバーからも外すつもりだ」

監督のその言葉に、予想できていなかったのか御幸が慌てている。…当たり前だよバカ。

「キャプテン代理は倉持!」
「はい!」
「レギュラーキャッチャーには小野!」

その日からの練習は、御幸の抜けた穴を埋めるべく熱を帯び、監督も無事神宮大会の指揮を執ることが決まった。

ブルペンではいつも以上に栄純が吼え、ノリも静かではあるが闘志を燃やし、降谷くんも完全復活を目指して調整している。
ただ、一人を除いて。

「ノリ〜アピール足りないんじゃないの〜いいのかそれで」
「お前らさ〜仲良くしすぎじゃね〜」

『…御幸、うるさいよ』
「っ、優しくしろよ」

御幸の被っている帽子をとって正面にして強めに被せておいた。

『じゃあ静かにしてて』
「だって暇だし」
『分かるけど…』

「あ、そうだなまえ」
『ん?』
「これやる」
『…は?』

被せたはずの帽子は本人の頭にはなくて、なぜかわたしの頭にある。

『練習中は被ってなよ』
「いやその通りなんだけど…」
『自分のあるし』
「…神宮も記録員だろ?」
『うん』
「じゃあ自分のじゃなくて俺の被っておいて」

御幸の急なお願いに思わず、なんでって聞いてしまいそうになった。けど、御幸の目を見たらなんとなく聞いちゃダメな気がして、『うん』とだけ言って帽子をあるべき場所に返した。

「…サンキュ」
『じゃあ静かにしてなよ』
「それとこれとは話が別かな」

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