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「ねぇねぇ、みんなで花火見に行かない?」
夏休みも終わりが近づいてきたある日、青道の近くで花火大会が行われることになっていた。
「みんなって?」
「二年生で!」
『え、部の?』
「そうだよ〜うちらの学年なんかそういうのしたことないじゃん!」
『そういえば三年生達よく学年で集まってたね』
三年生たちは結城先輩と純さんを中心に仲良かったからなあ。
それに比べるとわたしたちの代はまとまりがない気がする。うん。
「てことで、練習後行きませんか!」
唯が練習前、集まっていた二年生達に声をかけている。
「そっか今日だっけ」
「去年雨降って中止なってたなあ」
「おいキャプテンどうするー?」
「え、俺が決めんの?」
「お前が行かねェと意味ねェだろ」
「…まあ…」
『行こうよ御幸。みんな仲良くなるチャンス!』
「…まぁ、いいけど」
「ゾノも行くよね〜?」
「お、おう」
『仲間はずれはヤダよね!』
「…俺めんどくせェんだけど」
『いやいや麻生、御幸がなんか奢ってくれるって』
「…仕方ねェな、行ってやるよ」
「なまえ、ちょっと来い」
そんなこんなで、練習をみっちりやった後、やってきました花火大会!
日はもうすぐ沈みそうで、あたりは徐々に暗くなってきている。
会場である河川敷にはたくさんの屋台が出ていて、人もたくさんだ。
「人すごいね〜」
「まあ、そりゃそうなるよね」
『場所とっておいてよかったね』
練習のお昼休憩のときに、マネ三人で抜け出して場所取りに来たのだ。(もちろん部長の許可を得た)
「とりあえず何人かで別れて花火が始まる20時前に集合でいいんじゃない?」
『おっけ〜』
「俺かき氷買ってくる」
「お、いいな俺も」
「たこ焼きもいいな」
「ゾノってたこ焼き作れんの?」
「当たり前や!」
選手たちは各々寮で夜ご飯もみっちり食べたというのに、屋台に出向いていろいろ買ってくるようだ。
「俺と川上でここ見てるから、買い出し行ってきていいぞ」
白州がそう言ってくれたので、わたしたちマネ三人も屋台へと繰り出す。
「なまえ何食べる?」
『ポテト食べたいな〜』
「唐揚げもおいしそう〜」
たくさんあってどれも美味しそう…。どれにしようか迷いながら歩いていたら、見覚えのある髪をした人物が射的を楽しんでいた。
「倉持何してんの?」
「見りゃわかんだろ」
「倉持すごいんだよ」
「ああ、全然外れねェの」
そばにはナベたちもいた。
倉持の方見てみると、しっかり狙いを定めて的に当てていた。
『へーすごいもんだね』
「普通だわ普通」
しばらく射的をしている倉持を眺めていた。だってほんとに百発百中なんだもん。
『…あれ、幸子と唯は?』
「あ?さっきまでいただろ」
『てかナベたちもいないけど』
「は…」
もしかして置いてかれた?
慌てて携帯を開いてみたら、幸子からメールが1通。
"なんか二人で楽しそうだったからナベたちと先行くね〜"
『……』
「…げ、マジで置いていきやがった」
倉持も携帯を開いている。たぶんおんなじ内容だろう。楽しそうってただ見てただけなのに…。
『わたし追いかけようかな…』
「この人だかりはムリだろ」
花火の時間が近づいてきているからか、人の数はどんどん増えている。この中で探すのは大変だろう。
「戻るかー」
『待ってわたしなんか食べたい』
「何食うんだよ」
『かき氷!』
喉乾いてきたし、すぐ近くにかき氷屋さんがあったのでそれを買って戻ろう。
『イチゴ1つください』
「はいよー。お、さっき射的すごかった兄ちゃんじゃねえか」
「ッス」
「彼女連れだったのか〜かわいい彼女だねえ。青春だなあ」
「…は…」
彼女…?
え、わたしのこと?
『えっと違うんですけど…』
「いいっていいって一緒に来てるってことはそのうちそうなるんだろ?照れるな照れるな!」
ガッハッハと豪快に笑ったおじさんは、かき氷を渡したあと"ちゃんとくっつけよ!"と謎に念を押して来た。
『はぁ…どうも』
なんか否定するのも大変なのでそのままにしておいてその場を離れる。
『倉持?』
「…あ?」
『戻んないの?』
倉持がボーッとしてなかなか動かないので声をかける。
「…なあ」
『んー?』
「なんでさっき否定しなかったんだよ」
八月も終わりに近づいてはいるものの、まだまだ暑い。溶けてしまう前にかき氷を口に入れる。
『だって違いますって言っても意味なさそうだったし』
「…」
『あ、否定して欲しかった?だったらごめん…』
わたしとそういう風に見られたくなかったのだとしたら申し訳ないことをした。
「は、別にヤじゃねェよ!」
『…お、おお』
「お前こそ嫌だったらはっきり言えよ!」
『えー別に嫌では…』
「は、…」
『まあまあ、かき氷食べない?今ならタダで一口あげるよ』
「…っ、どうせならブルーハワイがよかったわ」
『だってイチゴが一番好きなんだもん』
ここで問題が起きた。一口分かき氷をとってあげたのはいいんだけど…あれ、これってわたしが食べさせるの?ストロー渡せばいいの?
「何してんだよ早く寄越せ」
『あ、うん…』
倉持の出方で決めようと思ってストローをそちらに向ければ、パクッとそのまま食べた。
「つめて…」
『…かき氷だからね…』
アーンしたみたいだ。いや、したのか。これ結構恥ずかしいかも…。
みんなのいるところまでは、あと少し。
「…もう一口」
『…え、まだ食べるの?』
「いいだろーが」
『しょうがないなあ…』
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「…ねえあの二人ウチらが後ろにいるの気づいてない?」
「気づいてたらあんなことしないよ」
「え、倉持とみょうじって付き合ってんの?あれ?御幸は?」
「アレでまだ付き合ってないのよ」
「は、マジかよ倉持…」