■ ■ ■

『黒子くんの誕生日?』
「そうなの〜!一緒にお祝いしよ?」

そう言って電話をかけてきたのは中学時代の同級生である桃井さつきだった。彼女とは同じ部活仲間であり、今現在も頻繁に連絡を取り合う仲である。

話題はもうすぐやってくる、彼女の想い人の誕生日についてだった。その日、中学の同窓会のようなものを開いてお祝いしたいらしい。

『いいけど…誰呼ぶの?』
「それはもちろん、キセキのみんな!」

わーお。やっぱりそうだ。彼らといえば、中学二年生のときからつい最近のウィンターカップまで、その仲はぎくしゃくしていた。
でも、それぞれが誠凛高校と戦って負けを知ってから、少しずつそれが緩和されてきているように感じる。だって同じ学校の緑間がそうだから。

「じゃあ当日ね!」

そう言って電話を切ったさつき。なんだかんだで、このメンバーが揃うのは中学以来だ。楽しみ、かもしれない。

▼▲▼

そして、1月31日。
約束の時間に間に合うように準備をして家を出る。ストバスをするというので少しラフな格好を選んだ。現地集合になっているけど、さつきと途中で落ち合ってそこまで一緒に行く約束をしている。

「あ、なまえ〜」
『さつき久しぶり!』

会うのはウィンターカップ以来だけど、中学時代は毎日会っていたから1ヶ月会わないだけで久しぶりに感じる。

「オイ俺は無視かよ」
『ちょっとさつき、なんか聞こえない?』
「えー?気のせいだよ気のせい!早く行こ!」
「オマエら…」

青筋を立てているのはさつきの幼馴染の青峰だ。こんなノリで話すのもすごく久しぶり。中学2年のあのときから、すごく近寄りがたくなってしまったから。

『うそうそ。青峰も久しぶり』
「…おう」

それが、ウィンターカップで誠凛と対戦して何か吹っ切れたのか、少しだけ前みたいな雰囲気が戻ってきた。本当、よかった。

「きーちゃんおはよ〜」

目的地に着くとそこにはすでに黄瀬の姿があり、準備運動をしているとこだった。やる気満々だなあ。

「桃っち、青峰っち」
「オマエ早すぎんだろ」
『黄瀬、わたしもいる』
「うわっ、なまえっち!?」

青峰の後ろにいたから気付かれなかったんだろう。どんだけデカいんだこいつ。

「びっくりしたっス…青峰っちデカすぎなんスよ」
「こいつがチビなだけだろ」
『わたし平均身長あるんですけど〜』

ちょっとムカついたので青峰の背中に軽く何度か頭突きをしておく。

「なまえそれまだやんのか?」
『うん』
「ハァ…」
『え、何…ぐえっ』

しばらく一方的にやられていた青峰だったが、痺れを切らしたのか身体を少し右に寄せ、左腕をわたしの首に回してきた。苦しい。

「何をしてるんですか青峰くん、みょうじさん」
「うおっ!?」

いつのまにか今日の主役も到着していたようだ。毎度のことながら、黒子くんには驚かされる。申し訳ないけど本当に分かんなかった…。まあくだらないことしてたのもあるんだけど。

「テツくん!」

想い人の登場に目をキラキラさせたさつきが、誕生日おめでとうの言葉とともにプレゼントを渡している。中身は手編みのマフラーだそうだ。愛されてるなあ黒子くん。
わたしからもささやかなプレゼントを渡したところで、聞き覚えのある声がその場に響いた。

「ヘイヘイヘーイ!お待たせっと」
「高尾くん!そんで…」
「ミドリン!」
「おい高尾。俺はラッキーアイテムを買ってこいと言っただけなのだよ」
「ハイハイ。降りなきゃ渡してやんないよ」

そして高尾は干し椎茸をぶら下げた。わたしにとっては見慣れた光景だけど、他の人からすると少しだけ異様な光景かもしれない。まあ、緑間が変わっているのは中学からなんだけど。

『高尾』
「お、なまえ!」
『休みなのにごめんね』
「いいよなまえに頼まれたら断れねぇし」
「おいみょうじ、まさか」
『一応保険かけといただけだよ』

緑間が来ないかもしれないと不安そうにしていたさつきのために、高尾という緑間にとっての最終兵器を投入させてもらったのだ。

『高尾ありがとね』
「ん。今日は楽しんでこいよ」

自転車に乗りながら高尾がわたしの頭をポンポンする。たまに高尾はこういうことをするからちょっと照れるんだけど、最近やっと慣れてきた。妹がいるみたいだからそんな感覚でやってんだろう。たぶん。

「高尾くん…」
「ん?黄瀬くんどうした?」
「いや…」
「ははっ、スゲー顔。いいだろ今くらい」

その後干し椎茸を緑間に渡し、無事ミッションを成功させてくれた高尾が去って行った後、緑間もラッキーアイテムと言って黒子くんにひよこのキーホルダーをあげていた。
…なんだかんだ最初から来る気だったんだね。よかった。

『あ…』

少し目線をずらすと、遠くの方から赤い髪がちらりと見えた。

「やあ」
「赤司っち!京都から来てくれたんスね」

赤司くん。

「久しぶりだな。…中学、以来か」

中学2年のあのときから、人が変わってしまったと思っていたが、それは本当で。つい最近のウィンターカップでようやくもとの赤司くんに戻ったのだ。懐かしい雰囲気に、思わず涙が出そうになる。
ウィンターカップのあとはバタバタしていて、遠目でその様子を見ることしかできなかったから。

「とりあえずここまでは揃ったけど…」

問題はあのめんどくさがりの紫の彼だ。ただでさえあの性格なのに、今は物理的に距離も遠くなってしまったので来る確率はかなり低い。

「紫原ならもうすぐ来るよ」

そう言った赤司くんの言った通り、紫原はのそのそと茂みの方から登場した。…なぜそこからなんだ。相変わらずなかなか読めない人である。

「なまえちん久しぶりじゃね?」
『ん。ウチと当たらなかったからね〜』
「またちっさくなったね」
『…君が大きくなっただけだよ巨人め』

そしていよいよ、キセキの世代だけの3on3が始まる。高校バスケ界の人ならぜひとも見たいであろうこの試合も、今観客はさつきとわたしだけ。

「それじゃあ、ティップオフ!」
プレゼント

title by コペンハーゲンの庭で




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