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目を覚ますとここは…また見覚えが…。
もう三回目ですよ。もうやめませんか。
二度あることは三度あるってやつかなあ。じゃあこれが最後だよね。お願いだからもうやめてください。心臓がもたないです。
しかも前回青峰と閉じ込められてからまだ一週間しか経ってない。
あれから青峰には会ってないのであれが本当だったかはまだ確認できてないし。
でも、前回のでわかったことが一つ。
たぶん、これは現実だ。
だって青峰にあれからめっちゃキスされまくって、唇だけじゃなくていろいろ吸われた。
戻ってきて鏡をみてびっくり。
首元にくっきりキスマークが残っていた。青峰め…。
てことは、信じられないけど現実なんじゃないか、と思うワケですよ。
「あれなまえっち〜?」
今回はコイツですか。モデルですか。シャララですか。
「ここどこっスかね?俺家で寝てたはずなんスけど」
『…わたしも家で寝てた。でも、』
どんな場所かは知ってるけどな。
『…来たことはある』
わたしは黄瀬にある条件を満たすと出られる部屋で、二回程来たことがあるということだけ伝えた。
「え、じゃあなまえっちはここ三回目ってことっスか」
『そうなるね。どんな条件だったかは覚えてないんだけど』
嘘である。でもこれ言っちゃうといろいろ厄介だしなんかわたしが軽い女になっちゃう(あれ、実際そうなってる?)
まだ彼氏もいたことないのに!!
「ふ〜ん。来たことは覚えてるけど記憶は曖昧ってことっスか。とりあえずその条件?ってどこにあるの?」
『毎回紙?に書いてあった気がするよ』
ここで下手にスラスラ答えると記憶あるじゃん!ってなりそうなのでできるだけ曖昧です感を出していこうと思う。
毎回条件が書かれた紙は相手が見つけてしまっていたので今回は先に見つけたい。
えーと、だいたいいつもあの辺だったかな…。
『あっ…』
そこに書かれていたのは
"お互いキスマークをつける。場所はどこでも、何箇所でも"
…あーあ。やっぱりこれ系の条件なんですね。もうヤダ…。
「なまえっち見つかった〜?」
さてここで問題。わたしはこのあとどうするでしょうか。
1.大人しく見せる
2.知らないフリをして元に戻しておく
3.破り捨てる
4.黄瀬を殴る
4番を選んだあなた!大正解!
『…黄瀬、ちょっといい』
「?なんスかってなにいきなり!」
『むしゃくしゃする!』
「犯罪者っスか!」
とにかくこのむしゃくしゃをぶつけたい!どうなってんのこの部屋!!
「もー…てことは何するかわかったってこと?」
キセキの世代はそれはもう個性豊かで一人一人が飛び抜けて扱いづらい。けどその中で黄瀬は器用だし空気も読めるのでわりとまともな方に入る。
『…これ』
結局これは見せないと先に進まない。これをすれば出られることはこれまでの経験でわかっている。
ここは素直に見せるしかないだろう。
「えーなんスか…って…マジ?」
『マジ』
ごめんよ黄瀬。イケメンな君ならもっとかわいい美人さん相手にできるだろうに。
ほんともうなんでわたしなの?
『ごめんね黄瀬』
青峰のときと同じように謝っておく。ほんと申し訳ない。
「なんでなまえっちが謝るんスか」
『だってわたしなんかに…』
「いや、オレはむしろ役得っ…」
『え?』
「なんでもないっス!まあ、キスマークなんて簡単だから大丈夫っスよ」
『キスマークなんてつけたことない』
「え」
どうせ経験ないですよ。彼氏いたことないんだもん(2回目)
『あ、でもあおみ…』
「?青峰っち?」
しまったああああ!!そういえば青峰に付けられたことはあるって言おうとしてしまった!なんて失態!こんなこと言ったら記憶ちゃんとあることになってしまう。
『…なんでもない』
「…なまえっち?素直になった方がいいっスよ?」
ああ、黄瀬のこの感じ。いろいろ察してるわこの子。
『なんでもないよ』
「はいだーめ。全然誤魔化しきれてないよ」
そう言いながら徐々に近づいてくる黄瀬。それから逃げるようにわたしは後退する。
「もう逃げられないよ」
太もものあたりに柔らかい感覚があたって、そのまま身体ごと後ろに倒れる。
ああ、これベッドだったのか。
そう思ってるうちに黄瀬はわたしの上に乗ってくる。
「緑間っちと青峰っち、それぞれ何したんスか?」
『だから覚えてないって』
顔が近すぎる。なんでこの人こんなに顔整ってるの。
「ふーん…あれ、首元になんかあるっスよ?」
『!』
思わずバッと手をあてる。
「ハイ、そこに何あるの?」
やられた…。黄瀬ってこういうのほんと上手いんだよなあ。
『…もうヤダ…』
「イヤなのはオレの方。何つけられてんの?」
黄瀬の声が低くなったから目線を合わせてみれば、黄瀬の目がマジになってた。
『知らないよ…だってそうなったんだもん』
「青峰っち?」
『ん』
「青峰っちとの条件は何だったんスか?」
『えーっとイチャイチャするだったかな』
「緑間っちは?」
『……キス…』
黄瀬のただでさえ大きい目がより見開かれた。
「え、それ口?」
『それ言わなきゃいけない?』
「いや今のでわかった。てかその分だと青峰っちともしたっしょ?」
「なまえ。オレ嫉妬深いんだよ」
そう言って黄瀬は青峰につけられた薄くなったキスマークの上に、優しくキスをした。
それがなんだかくすぐったくて、思わず声が出てしまう。
『ん…くすぐったい…』
「我慢して。あとでオレにもつけるんだからやり方覚えて」
そうだった。でも正直それどころではない。
つけ終わったのか黄瀬が顔をあげる。…だから、なんでそんな顔整ってるの。
「なまえ、」
普段と違う呼び方するのもやめてよ。無駄にドキドキしちゃうじゃん。
そういいながら顔が近づいてくる。あ、これキス…かなあ。
『ん…』
唇に触れた感触は柔らかくてあったかくて。
「なまえ、オレにもつけて」
とびっきりいい声でそんなこと言うから。
思いっきりキスマークつけてやる。そう誓いました。
〇〇しないと出られない部屋
hickey-Ryota Kise