夏休みに入ってから何週間か経った。8月も半ばに入り、まだまだ厳しい暑さが続く。
平日は基本的に午前中部活をして、午後は友達と遊ぶか、家でのんびり過ごしていた。たまに宿題を片付けもした。

それでも、頭から離れないのは倉持のことで。 メールアドレスは知っているから何度かやりとりはしているけど、やっぱり本人に会いたい。

夏休みに入る前に言ったあの言葉、覚えているかなあ。

今日も午前中部活に励み、午後は予定がないのでなんとなく図書館に行ってみることにした。外に出るたび、偶然倉持に会うかもしれないとちょっとだけ期待してる気持ちもあって、それなりの格好で出かけている。
そして今、その自分に感謝している。面倒くさいからってジャージで出てこなくてよかった。むしろお気に入りの服を着ておいてよかった。

「みょうじじゃん」
『倉持…』

図書館に向かう途中の公園近くで倉持に会った。突然すぎて頭がついていかないけど、とにかく嬉しい。口元がニヤけるのを必死で堪えた。

「どっか行くのか?」
『うん図書館』
「ヒャハ真面目かよ」
『倉持よりはね』
「うぜぇ」

久しぶりに見る倉持は最後に見た時よりも日に焼けて、どうしようもなくかっこよく見えた。

『く、倉持』
「あ?なんだよ」
『あの、』

せっかく会えたんだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。ちょうど今度の日曜、夏祭りがこの近くである。

「そういえば祭り行くって言ってたな」
『う…うん。今度の日曜…』
「ヒャハ、奢りなんだろ?」
『全部は無理だよ!』
「ケチくせーな」

倉持、覚えててくれたんだ。もうそのことだけで嬉しい。しかもほんとに一緒に行ってくれるんだ。

それからお祭りの日までわたしは見事に浮かれてしまって、宿題は全く進まないし、部活も注意散漫だったのは大目に見てほしい。
勉強も部活も大事だけど、この夏くらい、恋に夢中になってもいいじゃないか。

何を着て行こう、何の話をしよう…。
そういえばこの前あったときの倉持の私服、似合っててかっこよかったなあ。普段学校でどんな話してたかなあ。できる限り万全の状態で挑みたい。

そう思ったらいてもたってもいられなくて、服はお母さんに無理を言ってお小遣いを多めにもらって友達に選んでもらった。(その友達はわたしが倉持のことを好きなのを知っている)

話題が尽きないように、最近のニュースとかもチェックしてみた。倉持がニュースを見ているかは甚だ疑問ではあるけど。それでも何もしないよりはいい。

わたしはこんなに楽しみにしているよ。 倉持は、楽しみにしてくれているだろうか。

綿毛は夏へ飛ぶ

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