真夏の暑さがようやく落ち着き、緑がだんだんと鮮やかに彩られてくるこの時期に、わたしたちの中学校では文化祭が行われる。

残念ながら倉持とはクラスが違うので去年のように一緒に準備をすることはできなかったけど、当日一緒に見て回ることにしたのでわたしはとても上機嫌だった。

文化祭まであと数日に迫ったある日、ちょうど同じ時間に準備が終わった倉持と一緒に帰っていたときのこと。

『準備進んでる?』
「まあ、ぼちぼちじゃね」
『当日は一緒に見て回ろうね!』
「みょうじそれ毎日言ってくんのな」
『倉持が忘れそうだから』
「おい」

"あのとき"以来、わたしたちはその話題にお互い触れることなく、いままで通り接している。お互いそうしようと決めたわけではないけれど、きっと考えていることは同じだった。

別れを意識してしまうと、どうしようもなく悲しくなるから。

そうならないように、一緒にいる時間はせめて笑っていようと決めたんだ。

「…つかそのあと」
『後夜祭?』
「…いや、次の日。休みだろ」
『そうだけど…』
「なんか予定あんの?」
『ないよ、ないない!』
「ヒャハ!んな必死になるなよ」

だって倉持から誘ってくれるなんて!嬉しくて自然と顔が緩む。

「…俺ん家、来る?」
『行く行…え?』
「…だから、俺ん家。その日みんなでかけるから誰もいねぇけど」

『…倉持がいいなら、行く』

▼▲▼

当日はとても盛り上がり、わたしも倉持と少しだけ校内を回って中学校最後の文化祭は幕を閉じた。その間もわたしの頭の中は次の日のことを考えていて、いまいち当日の記憶が曖昧なのは内緒だ。

文化祭翌日、緊張であまり眠れなかったのもあって朝早くに目を覚ましたわたしは入念に準備にあたり、お昼前に家を出た。お昼ご飯を外で食べてからお家に行く予定なのだ。

「お」
『相変わらず早いなあ』

こうして二人で出かけることは何度もあったけど、毎回倉持は必ずわたしより先に来て待っていてくれる。何度か先に来ようとして早く来たんだけど、「なんかあったらめんどくせぇだろ」というなんとも倉持らしい言葉をもらってから早く来るのはやめた。
「めんどくさい」の中に隠された意味が嬉しくてその場で抱きつこうとしたのを必死で止められたのもいい思い出だ。

お昼ご飯をゆっくり食べて、(倉持は凄い勢いで完食していたけど)二人で並んで歩いて倉持の家へ向かった。何しろ初めて行くから緊張してその道中何を話したのか、申し訳ないけどあんまり覚えていない。

案内されて入った倉持の部屋はやっぱり男の子で、野球のものとゲームがずらりと並んでいた。そのままゲームをすることになり、オススメだという格闘ゲームを始めたワケですが。

『倉持!ちょっと手加減してよ!』
「ヒャハハハ!んなことするか!」

この人一切手加減してくれない。こうなるとは思っていたけどね…。

『もーむり。勝てない』
「最初っから分かってたじゃねぇか」

コントローラーを離して後ろのベッドを背もたれにして寄りかかると、倉持も同じようにもたれかかってくる。それが思いのほか肩が触れるくらい近くて、ドキドキした。いつもよく抱きついているけど、場所が違うだけでこんなに緊張するんだ。

『…くっついていい?』
「それ許可制になったのかよ」
『…じゃあ勝手にしていいの?』
「どーぞ?」

本当は抱きつこうとしたのに、その言い方がなんだか大人っぽくてかっこよくて、倉持の肩に自分の頭を預けることしかできなくなってしまった。

「ヒャハ、そんだけかよ」
『う…だって倉持かっこいいから…』
「…お前なぁ」

目を少し上に向けると、すぐ近くで倉持と目があった。反射的に目を瞑ると、唇に柔らかいものが当たって、身体に倉持の腕が巻きついてくる。

その間にもキスはだんだん深くなっていって、まだ慣れないわたしはついていくので精一杯。

『んん…っ』

思わず声が漏れてしまったのは、キスの合間にぬるりと倉持の舌が侵入してきたからで、それを聞いた倉持が逃すかというように抱きしめている腕にさらに力を入れた。

苦しいけど、幸せな時間。

「…わり、大丈夫か?」
『ん…もっと』
「…このバカ、煽んじゃねぇ」

溢れて溢れてとまらない

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