夜の静けさが島を包む。アカデミアを穏やかな夜が包んでいる。
暖かい風が吹き抜ける満天の星空の下を、十代は歩いていた。

「あー、何か面白いこと無いかなあ。こんな星が綺麗な日は……UFOとか落ちてきたりさあ」

独り言を言って空を見上げる。
すると、星が1つ瞬いた。

「お! 流れ星だ! ラッキー」

願い事……、と呟きながら十代は手を合わせる。

そのときだった。

「……あれ? あれれれれ」

瞬いた星は軌道を変えて、みるみる光を増していった。
そして……

「う、おあああああ!!??」

空から落ちてきた。
星は大きな音を立て、十代の頭上を通り過ぎ、やがてレッド寮裏の林に落ちた。轟音が辺りに響く。
「……な、何だってんだ……!」

十代は走り出す。
林から立ち上る煙を目指して。

「なにっ!? 隕石!?」

叫ぶように言い捨てて、走る足を早める。林が見えると、転がるように駆け込んだ。

「……く、クレーター……ってやつ……?」

そこには、異様な光景が広がっていた。十代の眼前には直径5メートル程のクレーターが出来上がっていた。そこから煙が立ち上ぼり、十代の視界を遮る。

「……何があるんだ……?」

小さく呟いたとき、強い風が吹き上げた。十代は思わず目を閉じる。
風は煙を吹き飛ばし、十代の長い髪を掻き乱した。

「…………っ」

そっと目を開ける。するとそこには1人の少女が倒れていた。その姿を目に入れると、十代は少女に駆け寄る。

「おい、あんた!大丈夫かっ」

慌てて揺り起こせば、少女が静かに目を開けた。
深い翠色の瞳が十代を捉える。
襟足の揃った黒髪がさらりと揺れた。

『……お前は……惑星イオの……』

「イオ? イルカ星人達のいた星のことか。でも何でその事を……」

十代が眉を潜めるのと同時に、少女が首に下げていた何かを震える手で掲げる。

「地球儀……」

少女の手には小さな地球儀が収まっていた。青い光を放つ美しい地球儀に十代が目を奪われていたとき、再び少女が口を開く。

『……私は砂夜子。この星に……』

そこまで言うと、砂夜子は目を閉じた。

「……おい、おい! しっかりしろ!」

十代が砂夜子の体を揺するも、砂夜子はぴくりとも動かない。

いつの間にか砂夜子の手から零れ落ちていた地球儀は、光を失っていた。


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