宇宙人とモヒカン(イナズマイレブン/混合注意)


 テン……と音を立て、グラウンドの隅にサッカーボールが転がる。
薄暗い夕闇の中に、白黒のボールがぼんやり浮かび上がった。
それを拾い上げ、不動は苛立ちの滲む声を張り上げた。

「何で言った通りに出来ない!」

名前と。不動は、グラウンドの真ん中で肩を弾ませ額の汗を乱暴に拭う名前を振り返る。

「くそッ、この俺が教えてやってるってのに。いつになったら皇帝ペンギン1号習得出来るんだよ、お前」

やれやれと不動が首を横に振る。半分は嫌み、もう半分は本気の悪態だ。
そんな不動に、中々整わない呼吸を無理やり押さえ付けて名前は言い放った。

「煩い、ハゲ」

ハゲ。
さらりと投下された爆弾に不動の顳かみに青筋が一本浮かび上がった。
ぐわっと見開かれた瞳。あ、切れる。
だがさすが不動。ぐっと自分を押さえ込み、ふー……と息を吐いて冷静に名前を見る。

「ハゲじゃねえ」

「いや、ハゲだろうが」

ズガガガン!
名前の言葉はそんな擬音を伴って不動に再び襲いかかった。
つるりとした不動のモヒカン頭を見つめ、名前はさらに言う。

「大体貴様の教え方が下手くそなのだ。ただでさえ体への負担が凄まじいというのに」

「耐えろ、それしかない。ていうかお前マジもんの宇宙人だろうが、体力あんだろ」

「簡単に言ってくれる……。そういうところが二流だな。ハゲだし。いっそ鬼道に2号の方を教わろうか……フサフサだし」

ぶっちん!
名前の口から出た“二流”という言葉に、ついに不動の堪忍袋の緒が切れた。
下手くそだのハゲだの、ひどい言葉で罵られようが耐えた不動だが、とうとう“二流”という言葉には耐えられなかった。
元々あまりよくない目つきを更にキツく釣り上げて、名前の着ているユニフォームを掴み上げた。暗い緑色に赤と白のラインが入った、真帝国学園のユニフォーム。以前不動も着ていたものだ。

「二流……って言ったな? てめえ……」

「ああ、言った。あとハゲとも」

ぎらりと不動の目が光った。
相変わらずの『ハゲ』攻撃を最早華麗にスルーし、ニタァ……と口角を上げ、額がくっつきそうなほどの至近距離で名前の翡翠色の瞳を見下ろす。名前の頭上に揺れる緑色のリボンと不動の黒い髪がクシャりとぶつかった。
翡翠色の瞳は静かに凪いでいる。しばし見つめ合うと、不動は小さく鼻を鳴らして名前を離す。

「絶対に……」

「……?」

「絶対に習得させてやる。俺を二流と言ったことを後悔させてやるよ」

不敵な笑みを浮かべ不動は数歩名前から離れると、転がっていたボールを蹴り上げる。
それを反射的にトラップし、名前はポカンと口を開けた。そして不動の言った言葉を理解すると、不動がしたように、ふんと鼻を鳴らして言う。

「精々頑張るよ」

「ハッ……。ああ、それと」

自身の髪を掻き上げ、不動は不機嫌そうに吐き捨てた。

「ハゲじゃねえ。モヒカンだ」


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