◎Happy Valentine!(牙琉)



 「どうぞ! 今日はバレンタインですから、チョコレートです」

2月14日。
その日、広い執務室で牙琉は書類を眺めていた。
突然、その鼻先に綺麗にラッピングされた小さな箱が突き付けらる。

「ありがとう……」

その箱を受け取って、牙琉は贈り主……瑛真に微笑んだ。

「いえ! 牙琉検事には色々お世話になってますから」

「お世話に、ね。ちなみに本命チョコは用意したのかな? ……もしかして、僕だったりする?」

「え!? あ、いやその……。そ、それは秘密です!」

「なんだ、残念」

牙琉に顔を覗き込まれた瑛真は、咄嗟に大きな声を出して牙琉から目を逸らした。その頬は微かに赤い。

「ねえ、これって手作り?」

「あ、いえ。買ったものです。私はほら、手作りってキャラじゃないので……」

「ふーん」

「……何ですか、その顔」

牙琉はにんまりと笑う。
普段あまり無いその顔に、瑛真はじとっと牙琉を一瞥した。
だが牙琉はその視線を気にすることなく、瑛真の手を取った。
……絆創膏が幾つか巻かれた手を。

いつも指先まで手入れを怠らない瑛真が、指をこんなに怪我するなんて考えられる原因は一つだった。

「お返し、しっかりしなきゃねえ……」

「え! いいですよお、そんなあ」

“お返し”というワードに瑛真はだらしなく頬を緩める。
そんな現金な瑛真の姿に、牙琉は苦笑いするのだった。そして穏やかに笑みを浮かべると、瑛真の頭を軽く叩く。ぽんぽんと数回叩いた。

「お返し、期待しててね」

「はい! じゃあ遠慮なく三倍返しでお願いします!」

コラ、調子に乗るな。そう言いながら、牙琉は懐っこい笑顔で頷いた瑛真の頬をきゅっとつねって笑った。





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