◎とげとげ(成歩堂なんでも事務所)



 「成歩堂さああああん!!」

ドタバタとけたたましい足音が聞こえ、そのすぐ後に二人の部下が叫び声を上げながら事務所の扉を豪快に蹴破った。

事務所内に飛び込んできた部下たちはそのまま僕のデスクへ一直線。
そして二人してグシャグシャの顔で僕に泣きついた。

「な、成歩堂さあん! 何なんですかあの子お!」

「我儘で生意気! 真面目なとこも少しはあるけど、もう面倒見きれません!」

王泥喜くんと心音ちゃんが目を血走らせ、口々に訴える。
その必死な様子に、僕は苦笑いを浮かべるのだった。


 「あの子」が僕らのもとにやって来たのは1週間程前のことだ。
突然、ふらりと僕の前に現れたその子の手には、御剣から僕に宛てた紹介状が握られていた。

「……千秋瑛真です。御剣検事の紹介で来ました。少しの間厄介になります」

酷く不機嫌そうな顔で彼女が突き付けた紹介状。
そこに書かれた文字は確かに友人のもので。
僕は紹介状を受け取った。


 「すまないね、お守り押し付けちゃって。この書類が終わったら……」

「お守りってなんですか」

げ……!
そんな王泥喜くんの声が聞こえた。
振り返る二人の向こう、事務所の入り口を見ればそこには件の少女が扉に寄りかかるように立っていた。

「だから、お守りってなんですか」

先程と同じ質問を繰り返ししながら、少女……瑛真ちゃんがこちらを見ていた。
瑛真ちゃんは扉に寄り掛かるのをやめ、こちらに歩み寄ってくる。少し低めの身長を誤魔化すように高めのヒールを履く瑛真ちゃんは、靴音高らかに僕の前に立つと、書類をどっさりとデスクに置いた。

「これ、御剣検事からの預かりものです! 当分は書類漬けだろうから、お守りは結構です! 私は一度検事局に戻ります」

ふん! と鼻を鳴らし、僕らを一瞥すると、用は済んだのか扉に向かって歩きだす。
そして……

床に散乱するマジック道具につまずいて壮大に転んだ。





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