◎Happy New Year!2013→2014!(成歩堂なんでも事務所)



 「すっかり寝ちゃった」

時刻は23時30分。
場所は成歩堂なんでも事務所。
成歩堂は、ソファやカーペットの上で折り重なるように眠ってしまった所員達を見下ろして苦笑いした。

大晦日、つい先程まで年越しパーティーだと騒いでいた彼らは、年明けまで残り30分という所でついに寝落ちしてしまった。
テーブルの上にはジュースの缶がや菓子類が散乱し、チャンネル争いの犠牲になったリモコンはテレビから離れた所に打ち捨てられ、年越し蕎麦のどんぶりは放置されている。
パーティーはそれはそれは盛り上がったらしい。

「もうすぐ御剣達が来るんだけどなぁ……」

仕事で遅れて到着する検事組を思いながら、成歩堂はため息をつく。
せっかく0時に間に合っても、自分以外は全員見事に潰れていては御剣達に悪い気がした。
仮に御剣達が何も言わなくとも、後々所員達が文句を言うに違いない。

『どうして起こしてくれなかったの! パパと一緒にカウントダウンしたかったのに!』

……と。頬を膨らませるみぬきの姿が目に浮かぶ。

そのみぬきは、今はカーペットに転がって眠っていた。隣に心音が寄り添うようにして眠っている。
数時間前、紅白歌合戦を見ながら瑛真を混ぜて3人で年越し蕎麦の大食い競争をして盛り上がっていたから、疲れてしまったようだ。

みぬきから視線を上げればテーブルが目に入る。
散らばる缶の中に、数本の酒缶があった。王泥喜と瑛真が開けたものだ。
未成年の心音達とは違い、王泥喜と瑛真は立派な成人だ。
……どちらも成人らしくない顔をしているが。
そのふたりはというと……。

「これは、ちょっと不味いかな……」

ソファに仲良く並んで腰掛け眠っていた。
しかも瑛真が王泥喜の肩に凭れるようにして眠っている。
酒が入った若者ふたりは蕎麦の茹で方について赤い顔で小一時間討論を繰り広げ、そしていつの間にか互の苦労話を涙付きで始め、そのまま落ちたようだ。

普段憎まれ口を叩いてばかりの瑛真が大人しく王泥喜にくっついているという、一見平和な光景だが、彼女の兄貴分である牙琉にこの光景を見られるのは少々不味い。
もうじき牙琉も御剣と共に到着するだろう。
気持ちよく眠っているところ可哀想だが、瑛真達には起きてもらうことにしよう、と成歩堂は瑛真と王泥喜の肩を揺する。
ついでにみぬきと心音も起こそう。

「王泥喜くん、瑛真ちゃん、起きて。みぬきと心音ちゃんも。もうすぐカウントダウン始まるよ」

「……うーん……ん? ぎゃああああッ」

うっすら目を開けた瑛真が、すぐ側で眠っていた王泥喜を見た途端大声を上げた。
そして王泥喜を突き飛ばす。少しだけ眠ったことで酔が覚めたらしい。
無防備なところを突き飛ばされ、あっけなくソファから転がり落ちる王泥喜。
大丈夫、君は何も悪くない、僕はわかってるよ。と成歩堂は心の中で手を合わせた。

「うおおあ!?」

「きゃあ! なになに!?」

「パパ……どうしたの」

瑛真と王泥喜の叫び声に心音が飛び起きた。一気に賑わったところでみぬきも目を開ける。

「おはようみぬき、心音ちゃん、瑛真ちゃん達も」

体を起こしたみぬき達に笑いかける成歩堂。
瑛真によってソファから突き落とされた王泥喜が訳も分からぬまま何とか這い上がろうと肘で体を起こした時、事務所の扉が開いた。

「……何してるの、おデコくん」

ひょこっと扉から顔を出したのは牙琉だ。仕事を終えた検事組が到着したようだ。
後ろから夕神と御剣も顔を出す。

「牙琉検事……あ、いやこれは千秋さんが……ぐう!」

「牙琉検事!」

ソファに掛けられた王泥喜の手を払い落とし、瑛真が牙琉の元に駆け寄った。

「間に合ってよかった。待たせたね、瑛真」

「いえ! お仕事お疲れ様でした」

「よぉ、心音」

「夕神検事!」

ぞろぞろと大男達が事務所内に入り、さらに事務所が賑わう。
牙琉と瑛真、夕神と心音がそれぞれ談笑を始める中、御剣も成歩堂の前に歩み寄った。
王泥喜とみぬきがテレビのチャンネルをぐるぐる回しているのを視界の端に入れながら、まずは互いの一年を労う。

「ほんと、今年は御剣に色々世話になったよ」

「ム……成歩堂……」

「パパ! カウントダウン始まるよ!」

御剣が何かを言い掛けたとき、みぬきがそれを遮った。
王泥喜と共にテレビを独占していたみぬきは、他の面々にも声をかけ、テレビの音量を上げる。

「8……7……6……」

テレビからカウントダウンが聞こえる。どうやら御剣たちはギリギリカウントダウンに間に合ったらしい。
それを聞いて、それぞれが目の前の人物に一年を労う言葉を送り、笑顔を浮かべた。

「3……2……1」

Happy New Year!

テレビの中で派手に花火が打ち上がり、人々の喜びの声が上がった。
辛いこと、苦しいこともあったが、それももう終わり。新年を向かえ、皆新たに頑張っていこう。
そんなアナウンスが鳴り響く。

「……明けた、な」

「ああ、明けたな……」

「皆さん!」

みぬきが大きな声を上げた。
一斉に集まる視線を受け、みぬきがさらに大きな声で言った。

「明けましておめでとうございます!」

明るいその声に、皆が微笑む。
そして部屋の中央に集まり、改めて、と声を揃えた。

「新年明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」






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