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 拝啓、親愛なる後輩審神者様。
降雪の候、寒い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
 こちらは連隊戦が終わり一息ついていたところ、新たに政府より大阪城攻略の報せが届き再び慌ただしい日々が始まろうとしています。髭切・膝丸を当本丸に迎え入れることに失敗し、少しばかり意気消沈していた本丸内の空気が大阪城の一報により明るく活気づいてきたことに、私も安心しております。元気になりすぎた一部の刀剣男士によって本丸の麩が三枚程駄目になりましたが。
今度の城潜りですが、地下二十階にて後藤藤四郎が入手できるそうで。
二十階と浅く、錬度を上げるのに丁度よく、また小判や資材等も手に入るとの話を耳にしました。
そちらの本丸には既に後藤が顕現していると伺いましたが、この機会に彼は勿論その他の刀剣達の育成、そして本丸全体の親睦を深めるためにも積極的に大阪城地下へ出陣してみては如何でしょう。
 それでは、厳しい寒さが続きますがお体にお気を付けてお過ごしください。 結    
                      「城潜り……こないだの連隊戦の報告書を片付けたばかりだっていうのに。もう次の仕事か……審神者って大変だな……」

先ほど届いた先輩審神者からの手紙を指先で撫でながら、ふうとため息をついた。
ついと文に視線を落とす。あの人から文とは。恐らく歌仙兼定に何か言われ渋々筆をとったに違いない。少し歪な努力の跡が見られる文字と文面は、歌仙兼定直々の添削のおかげか。あれこれ熱い指導を入れる歌仙に対し、唇を尖らせうんうん唸りながら文をしたためる彼女の姿が簡単に想像できる。それが何だか面白くて、くすりと声を漏らして一人で笑えば、すぐ後ろから間延びした近侍の声が聞こえてきた。

「なんじゃあ、主ぃ。なあにほがいにひとりで笑ったりして」
「むっちゃん」

振り返れば俺の座る座布団の傍ににむっちゃんが寝転んでいて。
随分とリラックスしたように肘をついて、眠たそうに大あくびをしている。

「ごめんごめん。先輩からのお手紙読んでたらついね」
「何かしょうえいことでも書いてあったがか?」
「ううん。普通の近況報告だよ。……大阪城かあ、そろそろこちらも出陣かな」
「おう? 出陣か?」

出陣という言葉を聞いたとたん、嬉しそうな顔でむっちゃんが体を起こす。
俺は頷き、ぱんと手を打って、むっちゃんに頼んだ。
早速出陣の準備と行こう。城の中の刀剣男士らの士気を上げたい。

「むっちゃん、出陣の準備をしよう。今から言うひと達を集めて」
「おう!」

太郎太刀、御手杵、燭台切光忠、浦島虎徹、堀川国広。
彼らを集めてもらったら、陸奥守吉行を加え、出陣だ。
そう伝えれば、むっちゃんは目を輝かせ、おう! まっかせときい! 出陣じゃあ! と叫んで立ち上がる。そのまま俺を振り返らずに廊下へ飛び出し、走り出した。
風のように去っていってしまった近侍を見送って、俺も「よし」と意気込む。
今回の大阪城は例に漏れず、後藤以外にも様々な刀剣や小判が手に入るはずだ。
先輩審神者の好意にも応えたいし、なにより刀剣男士達ともっと親交を深めたい。
信頼関係を深めるためにはやはりまずは出陣を重ねることだ。
出陣を終えた彼らとたくさん語り合い、次の手を一緒に考えていきたい。

「さあ、頑張ろう」

自分の頬を軽く叩き、俺も立ち上がった。

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