Desiderio di pace






『俺さ、お気に入りに手ぇ出されんの大嫌いなんだよね』



ニッコリと綺麗な顔で笑う少年
よく見れば目は笑っておらず、殺気と言っても過言じゃないピリピリと肌を刺激する冷たい空気



何故こんな少年が


一般人のはずなのに




ターゲットであった我がファミリーを崩壊に追い込んだあの男は少年の“お気に入り”らしい




情報を元に航ってきたこの国にはこんな諺があったはず




《触らぬ神に祟りなし》






『恨むんならあいつを狙った自分を恨めよ』




救急車くらいは呼んでやるという言葉を最後に、少年のギラつく瞳と振り下ろされる武器に意識を手放した





_______






「男主…?」



『ん?どうかしたか?』



散歩に行くといって出掛けた男主から香る微かな血の臭い



「何を、してきたんですか。」



血の臭いがする。
そう言うと男主は眉を下げて苦笑をする



『お前は気にしなくてもいい…って言っても気になるよな。』



「当然でしょう。」



だよな、とさらに苦笑を深くする
どう言おうか言葉を探し倦ねている様子が見てとれる



『まぁあれだ、俺のお気に入りに手を出そうとした奴に制裁?
ここ二、三日で視線が特に鬱陶しかったし』




男主から出た“お気に入り”



平和に過ごしたかったら苗字男主のお気に入りには手を出すな




これは僕の本拠地である黒曜だけでなく、あの雲雀恭弥の並盛でも暗黙の了解らしい



らしい、というのも自分がその“お気に入り”に含まれ最近人伝いに聞いたことだったからだ




「君が手を汚す必要などないというのに…。」




『?なにか言ったか?』



シャワーを浴びるための用意をしている男主にはぼそりと呟いた一人言の内容までは聞こえなかったようだ




「いえ、何も言ってませんよ。」



『ならいいんだけど。』



風呂場へ向かった男主の背を見送りながら、犬と千種に自分達を狙うマフィアがいればすぐに始末するようにと意識を飛ばす





あんな穢れた世界を男主が知らなくていいように
男主の笑顔が消えぬように











ただ願うは
(貴方の変わらぬ笑顔)

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