帰る場所
※白蘭を倒した後の未来の世界のお話
※黒曜メンバーの脱獄後捏造あり
ああ、やっと__
呼び鈴にかけた指が震える
全身が心臓にでもなったかのようにドクドクと鼓動が響く
今までに、脱獄するときでさえこんなにも緊張をすることなんてなかった
いや、一度だけ
彼に想いを伝えるとき、あの時も今みたいに緊張で手が震え、心音が目の前にいる彼に伝わってしまうのではないかと思うくらいに響いていた
こんなにも僕を掻き乱すのは彼が__男主が関わることだけだ
その事実に苦笑を洩らし、今度はしっかりと呼び鈴に指をかけた
――――――
復讐者の牢獄を抜け、10年前の沢田綱吉率いるボンゴレに協力し、すべてが終わった
今回のことが評価されたのか正式に僕達全員の出所も認めれた
凪と再会したときに聞いた内容で出所が認められた嬉しさも塗り替えられたが…
「骸様、男主はずっと骸様の帰りを待ってる」
「男主が…?何故…」
「…『骸は絶対帰ってくるから。それに、何があっても“おかえり”って言ってやるって約束したからな』そう、言ってました。」
「っ、凪…今男主はどこに」
「これが男主さんの住所だよ、骸」
「ボス…?」
「男主さんにはオレもお世話になったことがあってね。まぁ、それは置いておいて早く行ってきなよ。」沢田綱吉に渡されたメモに書かれた住所は“黒曜”
僕を待つにはこっちの方が便利だと一人暮らしを始める際に住み慣れた街までをも離れたと話していたらしい
何も言わずに居なくなった僕をこんなにも待っていてくれるなんて
過去の事は何も聞かず、でも何かあったというのは察してくれた彼が
家族を愛を知らないと溢した僕との口約束の為に
驚きで回っていなかった頭が理解し始めた途端に男主のもとへ行くためにアジトを飛び出した
―――――――
気の抜けるような呼び鈴の音が扉越しに家のなかに響いているのが聞こえる
そしてゆっくりと懐かしい気配が動く
『はい、どちら様で…』
ガチャリと音を立てて扉が開き中途半端な所で言葉が切れる
『……む、くろ…?』
最後にあったときより低く声変わりした声に、少し大人びた顔立ち
けれど自分の名を呼ぶ音が、驚き目を見開いた表情が、あの時と変わらない
その喜びと、いきなり扉を開けると思っていなかった驚きで言葉がつまる
『本当に骸…なんだ、よな…?』
「、ええ。お久し振りですね、男主」
微笑み男主の名前を呼べば手を引かれ、前よりも逞しくなった腕に抱き締められる
また昔との違いを見つけつつも変わらない温かさ
鼓動の早さが緊張から抱き締められてることへの照れに変わる
腕の力が緩まり改めて顔を合わせる
よく見れば目尻に涙が浮かんでいるのに気づく
つられて緩みそうになる涙腺を引き締めたが男主の言葉で努力は無駄になった
おかえり 俺の大切な(愛しい人)[ 2/12 ][*prev] [next#]
[mokuji]
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