海×ナンパ=…?





「海に行きませんか?」



事の発端は骸の一言だった
犬は分かりやすくはしゃぎ、クロームも心なしか嬉しそうで
面倒くさがりの千種やフランも言わないだけで乗り気だった




「それじゃあ出発は明日の朝です。しっかり準備してくださいね。」




翌日にということに驚きつつも、水着の調達だとクロームに連れられて買い物に




色々な種類の水着に目を奪われながら、クロームの選んでくれたものに決めた




バタバタしながら準備を済ませ、当日




『あっつい…』




更衣室から出た瞬間、カンカン照りの太陽に既に負けそう




『骸たちどこ行ったんだろ…』



「待ち合わせの場所は間違ってないし…すぐ、来ると思う」




独特の南国果実みたいな頭を探すために見渡しても見つからず、どうしたものかと思っていると声をかけられた




「うっわー二人とも可愛いね〜」



「最初っからアタリじゃん」




暑いのに厄介なのに絡まれた
所詮ナンパである
クロームはスタイルもいいし可愛いからよく犬たちが追い払ってるのを知っている



わざわざ私にまで来るとは骸並みに頭が可笑しいか、よっぽどの物好きだ




「な〜俺たちと遊ぼうぜ?」



『結構です』



舌打ちしたくなる衝動を押さえ、クロームを自分の背に隠すように立つ




「そんなこと言、わず、に……ヒィッ」



「僕らの連れに何かご用ですか?」




肩を引き寄せられ、抱き締められる
そろりと顔をあげると、見なきゃよかったと思う
ナンパしてきた男が悲鳴をあげた理由が手に取るようにわかる




骸の表情はいつもの二割増しの笑顔だが、人間道を使ったときのように黒いものを背負ってるように見える
ついでに空気が夏とは思えないほどに冷たい




「何か、ご用で?」



「す、すみませんでしたー!!!!」




脱兎のごとく逃げ出した二人組に心の中で合掌する
こんなちんちくりんに声をかけたばっかりに…




「全く、油断も隙もない…。大丈夫でしたか、名前」



『え、ああ、うん。骸のお陰で』



「クフフ、それならよかった。」




クロームも犬に何か言われているようだが、何ともなさそうだ
その事にホッとしていると、未だに抱き締められたままだった骸の腕に力が入る





『骸?』



「人の心配もいいですが、いい加減自覚してほしいものですね。」




『?だって今のクローム狙いでしょ。
私に声かけるのなんて骸みたいによくわからない感性してるか、よっぽどの物好きくらいだって』




そう、思ったことを言えば溜め息をつかれ、肩に顔を埋められる




「よくわからない感性、のところは聞かなかったことにします。
名前は自分で思っている以上に魅力的なんですよ?普段は僕が牽制してますが…。
だから、僕がいないときは気を付けてください。」




骸の腕の中で身を捩り、正面から抱き締め返す
反転するときに骸の髪がくすぐったかったが今は我慢だ




『骸がいないときなんて滅多にないし、もしもの時は返り討ちにするから大丈夫。』




「全くもって大丈夫じゃないですよ、それ。」




大丈夫なんだけど…と不満を洩らしながら骸の機嫌が直るのを待つ




「これだけ言ってもわからないとは…。仕方のない娘だ。」




やっと諦めたと気を抜いたとたんに、首筋にちくりと痛みが走る



そして、離れたかと思えば骸が着ていたパーカーを着せられる




『い、今なにを…?』




「マーキング、ってやつですかね」




こうすれば悪い虫も寄ってこないでしょうし




恐る恐る聞いたことに対して返ってきた上機嫌な返事に、暑さとは別の目眩がした




「さぁ、海を楽しみましょうか。」




来て早々に楽しむどころじゃなくなった海は初めてだ
どうにかして痕を隠せないかと着せられたパーカーで試行錯誤する




クロームたちにバレませんように









赤くなった頬は
(気のせいにした)

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