好きだ。


いきなりこいつは驚くような発言をしてきた。


「セックスしない?」


「「ぶふぇっ!」」


昨日長期任務が終わって、明日久々に飲みに行こうよ、といのに誘われた。
こいつが酒入るとマズいのは知ってたが何故こうなる。


吹いちまったじゃねえか。


「きゃー!きたなーい!へんたーい!」


「おい、頼むからデカい声で叫ぶな」


おしぼりでズボンを拭いてる間もいのの暴走は止まらなかった。


「ねぇえ、あんたさあ、テマリさんと付き合ってるじゃん?もうセックスしてるでしょ?」


「んなこと聞いてどうすんだよ」


んふふ、と不気味な笑みを浮かべてまたお酒を流し込もうしてたが、ジョッキを持った手首を掴んでそれを阻止した。


「もうやめとけよ。」


「質問に答えなさいよぉ」


いのは上目づかいで俺をまじまじと見つめてきた。


「してねえよ、これでいいだろ。」



 
手首を掴んでいた手を離すと、あら、そうなの、と上から目線な返事が返ってきた。


一息つこうと酒を口にした途端、こいつはまた言い出した。


「じゃあ、私が質問したことそっくりそのまま聞いてよ」


「はあぁあ?」


もうさすがに吹きはしなかったが、お前、めんどくさすぎるだろ。でもそういう俺も熱くなってきた。酒のせいだ。酔いが回ってきた。


「俺ヤバいかも」


「私としたくなった?」


「ちげーよ!バカか」


顔をぷっくりと膨らませて怒りを表す。
けどそれが愛おしく見えてしまうのはやっぱり酒のせいだ。



「お、お前はしたのか?」



「キバは肉食系よ?あんたとは違うのよ!当然でしょ?」


えっへんとした様子でこちらを睨みつける。


意外とあっさり返ってきたこともあってか、一気に酔いが覚めた気がした。
もう帰りたくなった。


あんたとは違う?


馬鹿にされたんだろ、これ。



「なあ、もう俺は帰るわ」


「どうして?まだこれからなのよぉ?」


席を立って勘定する俺の腕をいのは掴んできた。


「もっと飲もうよぉー」


「離せ。お前は1人で帰れ。それかキバを呼べ。」


いのの手を振り払い、勘定を済ませて呑み屋を後にした。



その途端に怒りも冷めてきた。何やってんだろ、俺。あいつ放っておいてどうするつもりなんだ?


少し後悔してきたので後ろを振り向いてみると誰かが後をつけてくる。



こんな、夜に一定の距離を保ってヨロヨロと歩く奴はあいつしかいない。



戻って近づいて見るとやっぱりそうだった。
だがさっきと違ってこいつは泣いていた。


「ごめんなさい…したのは嘘よ…冗談言いたかっただけ…だから置いていかないで…お願い…」


嘘だったのか。ますます自分、恥ずかしくなってきただろ。何をムキになって怒ってたんだ。


俺といの。


幼なじみであって、元恋人同士。今はお互い違う奴らと付き合ってる。当然、恋人間で何があろうとお互い関係ないし、覚悟はしてる。いや、してたはずだった。



「俺も悪かった。もうどうせ歩けねえんだならおんぶで送ってやるよ」



何も言わずゆっくりと俺の背中に乗ってきた。


軽くなったんじゃないか?と問うと、キバは痩せてる子が好きだとかなんとか。


絶対ぽっちゃりしてる方がいいけどな。


テマリさん、細いじゃないの。


いや、案外そうでもねえよ。


帰り道はそんな会話をしていた。
時折、いののふふっという鼻息が俺の耳に当たる。それが懐かしかった。



「ねえ」



ちょっとした沈黙のあと、何かを思い出したかのように言った。



「どうして怒ったの?」




今日は何度吹かせたら気が済むんだ。それ忘れようとしたのに。



「わかんね。元カノだからかもな」



「元カノって言い方嫌。あたしのことまだ好きなんでしょ?」



こいつ、まだ酔ってんのか?
また下ネタを発言してきたら振り落としてやろうかな、と言いたいとこだが、強ち間違ってないのかもしれない。



彼女がいるのに未練たらたらじゃねえ。



「あー、もう着いたぞ。」



もう目の前はいのの家だった。腰をおろしていのをゆっくりと降ろす。立ち上がって肩を回し、いのの方に振り返るとまたあの上目づかいだった。


「なんだよ。着いたぞ」



いのは一歩ずつ俺に近づいてきた。



「まだ好きならキスして。」




ヤバい。可愛い…
懐かしくて愛おしい。



「キバ、すまん…」




生温かい唇に触れた。


忘れかけていたこの温かさ。




俺は強く抱きしめた。







「好きだ。」







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漫画でこういうのを表現したい…(´・ω・`)

2012.10.18

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