14…逃げにはスピードが大事!

突然ですが、私は食事の際よく噛んで食べる。
早食いなど理由がなければ絶対にやらない。
……そして今、慣れない早食いは喉と胃にキツいものだと思い知った。

「いつもより早くない?早食いは体に良くないよ?」

一緒に食べていた綾香ちゃんは心配してくれたが仕方ないのだ。
なぜなら先生の呼び出しがありリボーン君との約束の時間を過ぎてしまっているから。
リボーン君は「休んでから来いよ。」と言ってくれたが場所が場所なだけにゆっくりしてられない。

「ん?何処にいくの?」
『ちょっと応接室に…。』
「!?……ソラ君。必ず生きて帰ってきてね?私、いつまでも待ってるから!」
『……お願いします。』

涙を浮かべ見送ってくれた綾香ちゃんと話を聞いて同じく可愛そうなものを見るかのような眼差しを送るC組の皆さん。
それもそのはず…あそこは最恐の風紀委員が委員長【雲雀 恭弥】さんの仕事部屋なのだ。

『………。』
「「………。」」

ドアの前で敬礼のポーズをとると皆も黙って同じ事をしてくれた。
C組の皆さんはノリがとても良いので助かる。
ちなみに何故、応接室に行くのかというとリボーン君が【アジト候補】として決めたからだ。
そしてボンゴレメンバーで下見をすることになっている。

『……よりによって応接室を選ぶとは…………走ろう。』

もし、委員長さんに出会ってしまったら【咬み殺される】可能性が高い。
考えたら不安で仕方ないので走って向かうと聞き慣れた銃声が聞こえてきた。

「うおぉおぉっ!!死ぬ気でお前を倒す!!!!」

ドアからコッソリと覗くと綱吉が死ぬ気モードになり委員長さんと戦っていた。

『……えーっと、綱吉が委員長さんと戦っていて…獄寺君と山本君は気絶…リボーン君は…見物みたいですね。』

何故こうなっているのかは後で聞くとして、まずは二人を連れ出さないといけない。
タイミングが悪ければ戦闘に参加しなければならないのだが、すぐにチャンスはやって来た。

「タワケが!!!」
「!」

綱吉は【レオン君 スリッパver】を手に委員長さんの頭を思いっきり叩いた。
おかげで委員長さんはふらつき隙ができた。

(委員長がふらついている今なら…!)dash!
「「「!?」」」

この際仕方ないので全力で山本君のもとへ行き横に持ち獄寺君を肩に担いで逃げた。
自分でいうのもあれだが普通ではないスピードだと思う。
逃げるにはスピードが大事だと思っている私は最小限の動きで素早く動けるよう修行をしてきた。
……日々の努力の成果なのだ!
そして一瞬の事に綱吉・委員長・リボーンの3名は驚き目を見開いていた。
部屋から出て屋上まで走っている私には皆の反応よりも気になることが…。

(死ぬ気モードの綱吉でリボーン君も一緒でしたから大丈夫でしょうが…二人は早く手当てをしないと……ッ…それよりも獄寺君…重い!)

一体どれ程のダイナマイトを隠し持っているのか……。
顔をしかめながら走っていると遠くから爆発音がした。
リボーン君が強制終了させたのかもしれない。

『………早食いするんじゃなかった………リバースしそう。』

屋上に到着したら目の前に救急箱が置かれていた。
ボンゴレマークが付いていたのでリボーン君のものだろう……なんて準備の良さ…。
治療をしていると下着姿の綱吉が満足そうなリボーン君と一緒にやって来た。

『お疲れ様です。……綱吉の下着姿も見慣れてきましたね。』
「俺は慣れないよ!」
「ちゃおっス。見事な逃げっぷりだったな。驚いたぞ。」
『フッ……逃げの速さは誰にも負けませんからね。』ドヤッ
「それってドヤ顔しながら言えることなの?」
『………。』パシャッ

私が綱吉の下着姿の写メを撮り、それを必死に消させようとしている綱吉をリボーン君は黙って見ていた。

(明らかに常人のスピードじゃない。動きも最小限に且つ正確に……そうとう訓練を積まないと出来ないことだ。)ニヤッ

その後の授業はサボり屋上で過ごした。
気絶していた二人も目を覚まし、リボーン君から説明をしてもらった。

「なぁ!【あいつ】にわざと合わせたぁ!!?」
「危険な賭けだったけどな。打撲とスリ傷ですんだのはラッキーだったぞ。」
『……【あいつ】って……チクろうかな。』ボソッ
「んなっ!?絶対にするなよ!…てか冗談でも言わないでよ。」ムスッ
「こんの白髪女!10代目に何かしてみろ!右腕の俺が黙っちゃいねぇぞ!」
『ム!…成敗!秘技【ひざカックン】!』
「なっ!?」

怒り立ち上がっていた獄寺君の背後に回り込み両足に【ひざカックン】をし強制的に座らせた。
それを山本君とリボーン君は笑いながら見て、綱吉は少し青ざめている。
もちろん獄寺君はキレた。

「……テメー…覚悟しやがれ!」
『火気厳禁!』
「んなっ!?なんで俺を盾にするんだよ!?てか【火気厳禁】を言う必要ないよね!?」
「10代目を盾に…テメーそれでも10代目の部下か!?」
『部下を大切にするボスは人気高いですよ?…と言うことで綱吉、部下のために犠牲になってください(笑)』
「なってたまるか!!」

山本君が仲裁に入るまで私達は騒いでいた。
その間、リボーン君はどこから出したのか分からないがエスプレッソコーヒーを飲み騒ぎ終わった私達に話の続きをしてくれた。
……ちなみに綱吉の隣は獄寺君が座り、私は山本君の隣に移動させられた。
ボスを守るためらしい。

「雲雀に会わせたのはお前達が平和ボケしないための実戦トレーニングをするためだぞ。鍛えるには実戦が一番だからな。」
「なっ何言ってんだよー!!」
「ちくしょーあんな奴に…!」
「…なるほどな(汗)」

さすがの山本君も苦笑いだ。
綱吉は青ざめ叫んでいる。

「つーかどーしてくれんだよ!ぜってーあの人に目ぇつけられたよ!」

獄寺君と山本君に励まされているが暫くは立ち直れそうにないな。
合掌しているとリボーン君は別の人物の名を口にした。

「安心しろ。目をつけられたのはオレとソラだけだからな。」
「なっ!?」
「え?…水野?」
「何でこいつが!?」
「当然だぞ。お前達を抱えてあの雲雀から逃げてきたのは誰だ?」

先程、聞いた事を獄寺君と山本君は思い出していた。
綱吉も直に見ているし、彼女の事をよく知っているので驚きはしたが納得している。
本人は固まって動かない。

「…聞いた話だと…ソラっすね。」
「そーいや、まだ礼をいってなかったな。おい……水野?」

皆が山本君の視線の先を見ると隅っこで体育座りをし死んだ魚のような目で空を眺めているソラがいた。

『…………雲になりたい。』ボソッ
「「「(汗)」」」
「良かったじゃ「シーーッ!今はそっとしといてやれよ!?」…チッ。」

さっきまでの元気はどこへやら……その日、彼女が立ち直ることはなく静かに家へと帰っていった。



〜続く〜






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