special | ナノ
▼ 悪魔のあくび
ウォール・シーナ東部の壁の近くに、随一の名家がある。色とりどりの花が植えられ手入れの行き届いた優雅な庭園を有し、シーナの内部の人口密度の高さを忘れるほどの穏やかな、ある意味で田舎のような落ち着きのある豪邸だ。庭の一角のすこしだけ他より高くなった場所にほんの小さな四阿(あずまや)がある。そこに置かれた大理石の椅子に座れば息をのむ美しさの庭を見渡すことができる。

ナマエは兵団の要件でこの屋敷に何度か訪れたことがある。
主人の寄付を仰ぐためであったり、茶会であったり、夜会であったり。

新兵の頃この屋敷に訪れたときは初めて見る庭園の美しさに目が離せなくなってしまうほどだった。そんな彼女を主人はいたく気に入ったらしく、寄付を増やすことを条件に茶会に招かれたり、夜会に参加し貴族とのカネのつながりをもたせやすくしてくれたりと何かと善くしてくれるようになったのだった。


彼女の所属する調査兵団の団長がエルヴィン・スミスに代わってからもナマエの派遣は続いたが、あるとき厄介なことが起きた。
寄付金の札束の間に、白いクラバットが丁寧にたたまれて挟まれていたのだ。上品な香水のにおいが沁み込まれて、カードも添えられていた。

―“きみがぼくを想っていられるように”

札束の入った鞄をエルヴィン・スミスに提出したのはほかでもないナマエだった。このカードに書かれている‘きみ’がナマエを指しているのであろうことは容易に想像ができた。
この主人がナマエをいたく気に入り、可愛がっていたことは兵団の上のものならだれもが知っていることだったからだ。エルヴィンは執務机に座ったまま、対面にぽつりと立っている彼女へ視線を移した。

「ナマエ、これは?」




“ご苦労だった。”
先ほどまでの彼女を労う柔らかい声音と表情から一変して、エルヴィン・スミスは鋭い視線、凍り付くほどの冷たい声音で彼女を射抜く。手には、白いクラバットとカードが差し出されていた。

「…エルヴィン、団長?」

札束を詰め込まれた鞄の中身は、部下である彼女はちらりと確認しただけで、クラバットの存在にすらも気づいていないのだった。
脳内に疑問符を浮かべながらも、様子が一変したエルヴィンの顔色をうかがうような速度で近づいたナマエは、両手を伸ばしてクラバットを受け取ろうとした。が、

彼女の指先がクラバットに触れるより先に、エルヴィンの手のひらが彼女の右腕を奪った。
ぐ、と自身に引き寄せるように机越しにナマエの身体を引くと、彼女の左耳に口を近づけ、彼女にしか聞き取れないほどの大きさで、こう、吹き込んだ。

「きみは彼に、なにを教えたのかな。」

―やけに時計の秒針の音が大きく響いたような気がした。
ナマエは、はっと彼の言わんとしていることを察し、目を見開いたまま悲しみの色を浮かべ彼を見つめた。眉尻を下げ、薄い唇は震えている。
そんな様にも、かの主人は腰を熱くしたのだろうかと思えばエルヴィンは、胸の奥が焼き付くような感情に苛まれた。

「…っ、ちが、エルヴィン団長」

頬をうっすらと上気させるナマエが愛らしく、しかし、エルヴィンが何のことを指して言っているのか、瞬時に察した彼女は憎らしくもある。相反する感情に突き動かされ、気づけば彼女は執務机の上に組み敷かれていたのだった。

「…ちがう?なにが正しくて、なにが間違っているのかな、ナマエ。」

知っているのだ。寄付を集めるのに際し、身体を差し出し利益を得る方法が、兵団内にはまかり通っていることを。エルヴィンはそれと誤解をしている。クラバットに、カードに、何が施されているのかナマエが見ることは叶わなかったが、彼女を気に入った主人が、なにか、そういうことを匂わせて書いたであろうことは、エルヴィンの様子から察することはできた。
しかし、‘かの主人との間になにもない’ということを証明する手段などなにも持ち合わせていないのだ。その事実にナマエは打ちひしがれて、次に紡ぐ言葉がそうやすやすと浮かびはしない。信じてもらうより他はないのだ。

両腕を机に縫い付けるように押し付けられながら、エルヴィンはナマエの首筋に唇を寄せた。行為の前には必ず優しい口づけをくれるはずなのに。彼の冷たい意思が彼女の中に流れ込んでくるかのようだった。
強く首筋を吸い上げられ、紅い花がいくつも浮かび上がってゆく。

「ちが…なんにも、なくて。」

弱弱しい声音で、時折漏れる甘ったるい女の喘ぎの合間にナマエは、ちがう、ちがう、と繰り返す。仰向けに横たえられても形を残す豊満で弾力のある胸をエルヴィンは両の手で強く揉み上げた。

「…この身体のどこを教えたんだろうな。」

服の上からでも形を柔軟に変える柔らかな乳房をひとしきり揉むと上衣が乱れ、形のよい臍がちらと衣服の下に覗いた。エルヴィンはその臍を舌でつつくと、ナマエはびくん、と身体を揺らした。

「君の此処が弱いことを彼も知っているんだろうか。」

「…ねえ、エルヴィン、ちがう…の、あっ。」

虐めすぎただろうか、それとも生理的なものだろうか。涙が目尻に浮かび、今にも零れ落ちそうだ。エルヴィンは彼女に覆いかぶさり、涙を舌ですくってやると同時に、下衣の隙間から手を入れて、彼女の割れ目を直に擦った。熱を帯び、じんわりと愛液がにじむ其処をゆっくりと指先で撫でながら、彼の詰問はさらに続く。

「まさか、此処まで、教えていないだろうね?」

「そんな…こと、してない。っあ、ん。」

否定しながらも、甘い声を上げる彼女へ湧き上がる嗜虐心であろうか。ひどい言葉を浴びせれば浴びせるだけ、すがりつく彼女見たさに行為は、そして、進んでゆく。
下衣の間に窮屈に押し込められた腕を引き抜き、制服のボタンとジッパーを下すと、ほのかに甘い愛液の香りが鼻腔をくすぐった。
ぐい、と膝を大きく開かせれば、執務机の上に淫らな姿で横たわるナマエのどこもかしこをも眺められた。明かりもそのままに濡れそぼった性器はひくひくと雄を誘い、甘い蜜をたたえ待っている。

「…こんなにきれいなのに、ここも汚されてしまったんだろうか。」

半ば独り言のように呟きながら、顔を寄せてナマエの割れ目に舌を伸ばす。ナマエはわずかに頭を振って否定するより他ない様子で、喉奥から漏れる甘い声を我慢するかのように下唇を噛んでいた。

彼女の敏感な箇所はエルヴィン自身が最もよく知っている。
秘豆の皮を優しく剥いて舌先で撫で上げれば、ついに声が我慢ならなくなったのか、愛らしく艶めかしい悲鳴を上げた。
明るみであられもない恰好をさせられているという羞恥心が、女の声をあげてしまったことでまざまざと実感させられた。ナマエは、かあっと頬を染め足を閉じようとするも、それは彼の力にかなわない。
ゆっくりと、彼の太い指が割れ目に差し入れられ、内部で引っ掻くように刺激される。ぬちぬちと響く自らの性器と彼の指による粘着質な音と、自分の喉から発せられる女の声に耳を塞いでしまいたくなるほどであるのに、快楽はその恥じらいをやすやすと超えていく。
気づけば、腰を浮かせ指を飲み込み、快感に悶えているのだった。

ゆったりとねちっこく指での愛撫を続けてやれば、やがてナマエは物欲しそうな表情へと変貌してゆく。頬が紅色に染まり、眉根は自らの肉欲に戸惑うかのように寄せられ、ぽってりとした唇は半開きのまま熱い息を吐いている。

「えるび…、ねえ。」

彼の肩に手を置いて、ねだるような表情で彼を上目に見つめる彼女の表情に、エルヴィンはよく耐えているものだと自身に感心するほどだ。とうにきつく主張している性器を開放すれば、ごくり、と喉を鳴らして羨望する彼女に見せつけるかのように数度、自ら扱いた。

「そうやってヤツにもねだったのか。きみは‘おねだり’が上手いからね。」

「…っ、エルヴィン…、ねえお願い、信じて。」

涙を一筋ついに零し、彼の肩に置いた掌に力を籠めた。

と、同時に彼女の中を彼の性器が穿った。
すぐさま律動がはじまって、おおよそ明るい室内に似つかわしくない、肌と肌のぶつかる音と性器のこすれる粘着質な音、ナマエの甘い女の声が響いた。
彼女の膝を抱え、抉るように中を突けば、エルヴィンの下に豊かな胸を揺らして快楽に悶える淫らな彼女の姿が映る。
上衣を下着ごとまくり上げれば、透き通るような柔肌の乳房がふるりと震えて光のもとにさらされた。薄い先端の飾りがエルヴィンを誘うように揺れ、律動の激しさを物語っている。

ここが執務室であることなんてとうに忘れていた。
彼女は揺さぶられながら、彼の首に腕を回して抱き着いて鳴いた。

「…すき、エルヴィン、あいしてるの、っああ」

彼にしがみつくように、信じてもらいたくて嘆願する彼女がいじらしく、愛らしく。
もうとうに信じていたもののかわいらしさに意地悪を続けたエルヴィンも背を丸め彼女に口づけを落とした。

「―ナマエ、きみを信じてるよ。」

耳元でそう言ってやれば、よかった、と安堵した様子で、彼女は微笑みを浮かべた。
しかしそれもつかの間のこと。
エルヴィンはナマエの上体を腕に抱きかかえて起こし、つながった性器はそのままに椅子に腰かけた彼の上に彼女が跨るような姿勢へと体勢を変えた。
抱き合うような体位で、エルヴィンはきつく彼女を抱きしめて、口づけた。そして、彼女の腰を支え突き上げるような律動を再開させる。

「あっ、えるび…だ、め…。」

先ほどよりも深くまで性器が届いて彼女の中を突き上げるそれに、逃げるように浮かぶ腰をしっかりとエルヴィンに支えられて、否応もなく律動される。
彼の膝の上で突き上げられ、あられもなく彼の目の前で揺れ続ける豊満な乳房が恥ずかしく、抑えようにも漏れる自分のものとは思えない厭らしい女の声にナマエはいやいやと首を振って快楽に悶えた。
白磁器のような透き通る肌の上にうすく汗が滲み、乳房の間を玉となって流れ落ちようとしていた。のを、エルヴィンは舌先を這わせそれすらも逃そうとはしない。
目前で揺れ誘う乳房をそのまま掌で包み、先端の薄桃色の飾りをぺろりと舐め上げると、下でエルヴィンを咥える其処がきゅんと狭くなった。
彼はなおも律動を続け、小刻みに性器を突き立て、頂へと誘ってゆく。

「あ、ああ、あ…えるびっ、あっ、イっちゃ…」

乳房から手を離し、再び腰を支えると彼女の最奥から浅い部分と強弱をつけ、彼女の中すべてを堪能してゆく。
彼女の蕩けた表情、背に回された腕と必死に彼の背中に指を立て快感に悶える様、激しい律動を表すかのように揺れ誘う柔らかで容のよい乳房。そのすべてときつく彼自身を咥える彼女の性器がエルヴィンを高みへと押し上げてゆく。

「…ああ、ナマエ、俺も」

存外余裕のない彼の声と彼の表情に、耐え難い快楽を彼女は享受し、そのまま達した。そして、彼女の性器が絶頂により収縮するのとほとんど同時に、彼も精を放った。

執務室は、ほとんど静寂だけが残った。


「次からのきみの派遣には、同行しよう。悪い虫がつくのは困る。」

ふ、と笑みをこぼしたナマエは、安心しきった表情で頷いて見せたのだった。





20190219 title by "afaik"
マチさまへお返事です。
マチさま:
遅刻どころではないくらい遅くなりました。申し訳ございません。
素敵なリクエストありがとうございました。
そして、嫉妬でひどくされる、というリクエストに対して
あんまりひどくできなかったような。
どうしても優男にしてしまうようです(?)
(文才がないだけです。)ごめんなさい。
少しずつリハビリしながら書いていきたいです。
進撃は変わらず大好きです。as






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