秘密 (後)

ぐい、とその肩を引けば簡単にナマエは俺の胸に落ちてきた。
おいおい、無防備すぎるだろう、などと、どの口が言えたものか。
引き寄せたのは間違いなく俺で、これからのことを案じて彼女が身を固くしている原因なのも俺だ。
ナマエの片手をとって、自分の股間を触らせる。もうそこは硬く勃ち上がっていて、一瞬だけ、彼女の頬が赤く染まったように見えた。
ナマエはそこを手慣れたように擦って、その場にしゃがんだ。

彼女はこの行為をどう思っているのだろうか。
これもまた団長補佐の仕事のひとつとでも割りきっているのか。




――はじめ彼女に好意を向けられていることはわかっていて、その気持ちを利用して欲を処理した。
そこに恋だとか、愛情だとか、そんなのはなくて、どうして抱いたのか、たぶん気まぐれだったのだろう、もう、忘れてしまった。

視線を下に向ければ、一心不乱にぺニスに舌を絡ませるナマエと目があった。
瞳はすこしだけ笑っているような、泣いているような、微妙な色を宿している。
普段の業務のナマエと同一の女なのか、と思うくらい、夜は淫らで妖艶だ。
普段は童顔が効いて幼げに見えるから、こんな様子の彼女など誰も想像できまい。そう考えて、俺は密かにほくそ笑んだ。
俺だけのものだとそのときだけは錯覚できた。

年甲斐もなく、最初は特別でもなんでもなかった玩具を、俺は好きになってしまっていた。
切欠なんて些細なもので、ナマエの肩が他の男の腕に掴まれているところを見たときに、ちり、と嫉妬の炎が燃えたのが始まりだった。

大人なのだから、とは言うものの。
寧ろこの歳になったからこそ、こんな純粋に若い兵士に思いをかたむけ、告げられない気持ちを隠して腰を打ち付けている自分など、目を背けたくて仕方ない。
顔を見ないように繋がるのだって、最後の自己防衛だ。

「ひぁ、ん…だめっ、あ、ああっ、もう…!」

抱き締めると耳元に彼女の嬌声が掠めて、ぷるぷると柔らかな胸が押し潰されて、揺れて。
ぎゅう、としがみついて悶えるナマエがどうしようもなく可愛くて。

「はぁッあ、いっちゃう、まっ…て、一緒、に」

「…まだ だ、」

いつもふたりが達するように、中を奥までえぐるように突くと、彼女は絶頂を予感した。
しかし今夜は、うねる膣内に自分自身がイキそうになるのを耐えて、腰の動きを止めた。

「…ふ、はぁッ、…だんちょ?…やだ、…っ」

熱にうなされるように、ゆるゆると自分で腰を動かして、快感を得ようとする姿に、もうここまでかと自分の我慢の限界を悟った気がした。

「ナマエ…」

「…――っ!、んっ。」

蕩けた表情でうすく開かれた赤い唇を、食む。

そういえば、ナマエにキスをしたことが無かったなと、彼女の熱い吐息のすぐそばで思い出した。
入れたままのペニスは中がきゅ、とせまくなったのを感じてすぐにでもまた動きたい衝動に駆られる。

「えるび…っ、だんちょ…っ。」

素直になんてなれない三十路をとうに越えた男の思いをくちづけに託して、再び腰を振り始めた。
いつもより狭く感じる、熱い中を深く掻き回して、ナマエの身体ごと揺さぶって。
くちづけを一旦止めて間近に彼女を見つめれば、とろんとした瞳も、だらしなく開かれた唇も愛しくてしょうがなかった。
初めて顔を見ながら繋がれる悦びをひしと実感して、限界がもうすぐそこまで来ているのを悟る。

「ナマエ、ナマエ…ああ、――くっ、」

「だんちょ…っ!…いっちゃう、…っ!」

びくっ、びくと膣内でペニスに絡み付いて、彼女が達したのを感じて、どくどくと精液をその中に放った。

好きだ、という言葉はまだ伝えられそうにない。

20140429
あとがき

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