Sommer!!
※変態おっぱい星人なエルヴィン
※かっこいいエルヴィンはいません
※セクハラまがいなことしてます
※現パロ
カラフルなビーチ用品で溢れた店内は見ているだけで夏の開放的な気分を味わえるような気がする。さっきからそわそわしながらビキニを見つめているエルヴィンに嫌な予感がしながらも、可愛らしい水着たちに私も瞳をきらめかせていた。
「これなんかナマエに似合うんじゃないか?」
「え、どれ………って。それ?!?!」
爽やかな笑みを浮かべたエルヴィンに、はい、と渡されたのは、布面積の小さめな赤を基調としたカラフルな花柄のビキニ。可愛いな…と靡きかけたが、よくみれば、背中の紐が蝶々結びで留められているだけのそれは簡単にほどけてしまいそうだ。
「試着してみないか」
「あ、ちょっと引っ張んないで…!」
あれよあれよとエルヴィンは店員さんと話を進め、私を試着室へと押し込めた。
えっと…どうしようこれ…。
仕方ない、ちょっとセクシー過ぎる気もするけれど物は試し…気に入らなければ買わなければいい話だし、と腹をくくって身につけて見れば………悲しいかな、布面積の小さなそれは私の貧乳さをこれでもかと言わんばかりに強調してしまっている。
あ、だめだこれ、こんなの選んだエルヴィンに文句のひとつでも言ってやろう。
そう思って扉を開けてエルヴィンを呼び寄せると、わくわくした様子で近寄って来たかと思えば鏡越しの目線は思いっきり胸のあたりを突き刺している。
「あ、ナマエの胸…かわいらしいから……」
「………遠慮する間柄でもないでしょ、はっきり小さいって言いなよ」
「いや、でも、まって!これを入れたらいいんじゃないのか」
貧相な胸については否定しないのかよ…!
しゅん、とした私を見かねたエルヴィンはどこからともなく胸パッドを持ってきた。
いや、それ入れなさいって言われる方が傷つくんだけど……っていうか、どんだけこの水着を着て欲しいの、エルヴィン。
「エルヴィン…なんでそうまでしてこれ着なきゃいけないの」
「そんなの、」
「……?」
「脱がしやすいからに決まっ」
「ハイハイハイハイ、ストップストップ」
放っておけばそんな水着ばかりを選びそうなエルヴィンを店の隅に追いやって、私1人で選ばせてよ!と言いつけて売り場に戻ってきた。
こうなったら私に似合うの選んでエルヴィンをぎゃふんと言わせてやるんだから…!私のことは自分が一番よくわかってる…はず。
ああ……このパレオとか素敵だなぁ……
「どういったのをお探しですか?」
急に話しかけられて、パッと振り向けば爽やかな男性店員さんがそこにいて、思わず、え…!と固まった。ここ女性用の水着売り場ですよね、と思ったことが伝わったのか店員さんは焦ったように説明してくれた。
「フィッティングは女性店員が担当しますよ。男性目線の意見が必要なときなどにアドバイスさせて頂いているんです」
「ああ…」
なるほど、と少し納得したのちに、胸が小さいのがコンプレックスでして…と打ち明けてみる。せっかくエルヴィンに見せるものなのだし、素敵なものを選びたい(ほんとはもっと水着姿にときめいてほしい、あんな同情みたいな顔はもうイヤだ)。ここはこの店員さんに相談してみるのも手なんじゃないかと考えて、おずおずと切り出した。
「彼と…ハネムーンなんです…プライベートビーチに」
「それはおめでとうございます!」
「あの…だから、少し大胆なんだけど、コンプレックスも隠せるようなの…ないかなって」
「なるほど……」
その頃エルヴィンは、いつまで経っても水着選んだよという連絡のこないスマートフォンを見つめて、ため息をついていた。
そして、しびれを切らしたエルヴィンは、もうこちらから出向いてもいいだろうと女性用水着の売り場に早足で向かう。
「ナマエ…」
愛しい彼女の姿を見止めて呼び掛けようとした声は尻すぼみにしぼんでいった。と共にナマエの隣にいる男にじわじわとどす黒い感情が芽生えてゆく。
早足にそのふたりに近寄って行けば、ナマエがエルヴィンの存在に気づいた。
「あ、エルヴィン…!今選んだとこだったの…!ナナバさんが相談に乗ってくれて…」
水着片手に嬉々として話しかけるナマエは可愛いがそれどころじゃない。店員の…ナナバと呼ばれた男を睨み付けながらエルヴィンはナマエの肩を抱き寄せる。
「旦那さまですか…?」
ナナバはにこやかにエルヴィンに対し会釈した。
「可愛らしくて健気な奥さんですね、」
「ええ…」
お前に言われなくとも知っている とでも言うかのような威圧的な雰囲気を纏ったエルヴィンに、異変を感じ取ったのはナマエだった。
「エルヴィンにも気に入って欲しいし、こういうのの専門のナナバさんに協力してもらって探してたの…」
「そうか…」
「ね、ねぇエルヴィン試着しにいこ…?」
ナマエはなんとか機嫌の損なっているエルヴィンをなだめつつ試着室へと引っ張る。
「ねぇ、私があの人と一緒だったから気に入らないんでしょ」
「……………」
「……でも私、あなたに見てもらうものだから…似合ってて惚れ直しちゃうようなの選びたくて。」
――健気で可愛いなんて俺がいちばん知ってるさ。こうして『俺のため』と言われてしまえば許してしまう他ない。
はぁ…とため息をついてナマエの頭をぽんぽんと撫でた。
「すまないな、ナマエ」
「ううん…着てみるね、これ」
「ああ、待ってる」
―――――
燦々と照りつける太陽の下、ホテルの他のハネムーン客らしい人影がぽつりぽつりとしか見受けられないビーチにふたり。
背もたれの倒れた二人用のベンチに横たわってさざ波の音を聞いていた。
「……なぁに、エルヴィン、その手は」
「決まっているだろう」
「…………」
「きみの可愛い胸を大きくする手助けを」
「ハイハイハイハイ、ストップストップ」
結局、私が店員のナナバさんと一緒に選んだのは胸を寄せやすいバンドゥビキニだった。
あの後、試着を済ませた私を見たエルヴィンは、瞳を輝かせて素敵だと言ってくれて、しまいにはナナバさんが引くほどに彼にお礼を言いまくっていた。
「…ねぇ、貧乳なの気にしてるんだから、もっと励ますなりなんなりしてくれたっていいじゃない…!」
「今のままの君で十分可愛いし俺は好きだが…?」
甘い台詞を照れもせず言ってくれるのは良いけれど…
「…じゃあ、なんなの、この手」
「…マッサージだ」
――旦那さんがこんなにおっぱい好きなのだなんて、このとき初めて知りました。
おわり
20140616
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