新婚リヴァイさん。続

連休中のショッピングモールは人が多く、私とリヴァイははぐれないように、きゅっと繋いだ手をそのままにウィンドウショッピングを楽しんでいた。
私の買いたいものもリヴァイの買いたいものも殆ど買い終えて、ふらふら歩きながら偶然たどり着いた、おもちゃ屋さんの前で立ち止まった。

「ナイルさん所の二人目がもうすぐ3歳なんだって。」

「…もうそんなになるのか。このまえ産まれたばっかだと思ってたのにな。」

「ほんと早いよねー。」

「…ナマエよ、何か買っていくか。」

「…ちょっと早くない?」

カラフルなベビーラトルや、ふわふわのパイル地のボールは見た目にも可愛らしくて、そういったものを手にとって真剣に選びはじめた旦那さんの後ろ姿に、思わず、くすと笑ってしまった。
おもちゃ売り場には、赤ちゃんを連れた夫婦や、やんちゃざかりの子どもを連れた家族とか、どうしてもおもちゃ欲しさに泣いてねだる子どもとか、とにかくにぎやかでしあわせが溢れていた。

「…あれ?」

「どうした。」

「あの子、迷子じゃないかな、って。」

そんな空間に、ぽつんと1人、涙をけっしてこぼすまいと我慢した表情で、きょろきょろと辺りを見回している男の子を見つけた。

「声、かけてみようか。」

周りの大人も気づく様子がないし、なにより男の子の見た目に既視感を覚えた私は、リヴァイにそう言うが早いか歩き出していた。

「ねぇ、ぼく。どうしたの?」

「………まま、が…。」

「迷子になっちゃったの?」

目線を合わせて尋ねると、こくん、と頷く様は感じた既視感とともに、男の子のかわいさにきゅんとして、思わず手のひらを差し出した。

「よし、わたしと一緒に探そうか!」

笑って言えば、ちょっとだけ男の子の表情は明るくなって、はにかんで手を握ってくれた。



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「…それでね、おれ、たんじょうびだから、ママにおもちゃかってもらおうとおもって、それで、…」

迷子センターにたどり着くまでにだいぶ打ち解けてくれた男の子と、手をつないだままでお話をしていると、既視感の原因がわかった気がした。
この子、リヴァイをちっちゃくしたみたいだな…、顔つきといい、髪型といい、そっくり。…まぁ、目付きはずっとこの子の方が可愛らしいんだけど。

迷子センターに着くと、すぐにお母さんらしき人が駆け寄ってきて、男の子をぎゅうと抱き締めた。それはそれは心配げだった表情がゆるゆるとほどけてゆく。

「よかった…、ありがとうございます。」

「いえいえ、泣かずに頑張ったんですよ!」

「そうなの…?偉かったわね、ほら、『ありがとう』は?」

お母さんに頭を優しく撫でられて、それからこちらに向き合った男の子はぺこっと頭を下げて、「ありがと」と言った。
いい子だな、と思ってから、ずっと空気のようになっていたリヴァイを横目に見た。リヴァイは男の子をとても優しげな瞳で見つめていた。たぶん他のひとが見ても優しげな瞳、とは思わないんだろうけれど。

視線を戻すと、まだ男の子はこちらをじいっと見ていて、何だろう、と思っていれば、思わぬ言葉が飛んできた。

「おれいにおねえちゃんのことおよめさんにしてやってもいいぜ。」

うつむき加減で、すこし赤い頬に、くちびるを尖らせて。照れくさいくせに強がってごまかして。
ああ、これは。
「愛してる」って言ってくれるときの旦那さんにほんとうに似ている。

「まぁ、この子ったら、ごめんなさいね。」なんて申し訳なさそうなお母さんに、

「いえいえ、そんな。」

と、ことわって。男の子には、ありがとうね、とだけ残して私たちはその場をあとにした。



――帰り道。また手を繋いで、ゆっくりと歩いて帰路につく、リヴァイと私の伸びた影を見つめて私は、ふふ、と思いだし笑いをした。

「なんだよ、気持ち悪い。」

「あの迷子だった男の子、リヴァイにそっくりだったなぁ、って。」

「は、冗談じゃねぇ。あんなガキと一緒にするな。」

「私…またちょっと楽しみになったの。」

そう言ってじぶんのお腹を撫でると、まだ平坦なそこを見つめてリヴァイは、「ああ、そうだな、」と言った。

「お前はいい母親になるだろう。」

「だと良いなー。」


ふたりして、おなかに眠る我が子に思いを馳せながら、指をからめて。
今だけの‘ふたりきり’に贅沢に寄り添いながら夕暮れを歩いた。

「まさかお前があんなガキにまで言い寄られるとは。」

「あんな小さい子になにいってるの!」


家族がふえるのも悪くない。
それはそれで とてもしあわせ。

20140513

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