それは船に乗って快楽の大海原に出掛ける感じ。
浅瀬で遊ぶような前戯をして、ゆっくり深海に潜るように深くなる行為が体を熱く火照らせる。
呼吸が辛い。噛みつくような荒いキスは、何もかも奪ってしまう嵐のように、俺から理性とか羞恥心とかを跡形もなく連れ去って行く。
どちらか分からない唾液が口の端から伝う。
乾いた肌と肌とがぶつかり合う音は、飢えた獣の交尾ようで、ただ貪欲に快楽を求めて腰を打ち付けている。
「っ、はぁ…ちと、せ」
「ん…なに?」
「イきそ…や」
「よかよ」
足が空を掻く。爪先がぴんと伸びる。瞬間、頭の中が真っ白になった。
肩で大きく呼吸をし、強く瞑っていた瞼をあげると、顔の上の千歳が辛そうに笑っている。
頬を撫でてやると指や掌にキスをし、膝裏を先程よりも高く持ち上げられる。
根元まで挿入され千歳で体が満たされた錯覚に陥る。
「んあ…、しあわ、せ…」
「なんが?」
「ちとせでみたされてるから…」
へらりと笑ってみせると目を丸くした千歳の雄が中で大きくなって、脈拍数も速くなった気がした。
そぎゃんこつ言われたら理性もたんばい、と苦笑いして再び獣のような交尾が始まる。ああ、もっときつくしてもいいのに。
喉からあがるがらがらな嬌声。千歳の濡れた唇から漏れる熱い吐息。接続部の卑猥な水音。
「しらいし、」
「っん…?」
「そん体で感じて…?おれがどれだけお前さんをあいしているか」
こくりと頷いてまた強く目を瞑る。
船はまだ港へは着かない。
快楽の海へ
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