お菓子より





今日もまたこうしてコートの横で彼の部活が終わるのを待つ。


(早く来ないかなー…)


季節はすっかり秋。
今日からもう11月だ。


フェンスに寄りかかって部室の扉の方を向くと、ちょうど帰り支度を終えたブン太がジャッカルくんと切原くんと共に出てきたところだった。

私の視線に気がつくといつもの笑顔を私に向けてくれた。


2人に別れを告げるとブン太と私はならんで歩きだす。

「いつも待たせて悪いな」
「全然!見てるの楽しいもん!」


そう言って私達は手を繋ぐ。


(ブン太ってやっぱりかっこいい…)


均整がとれた顔立ちに白い肌、自信あり気な表情も彼の魅力のひとつ。

すっかり日が暮れた帰り道を歩きながら、ブン太の横顔を覗き見ていると彼とバッチリ目が合った。


「ななな何!?」

「いや、蕗珠こそ何だよ!?」

「見てたでしょっ!?」

「それはこっちの台詞だろい。で、どうかしたか?」


そう言ってブン太は私の目を見つめてくる。


そんな風に聞かれても

「え、と…」


ブン太に見とれてました!!
なんて言えるはずもなく


「と…」

「と?」




「と…trick or treat!!」




そう言ってブン太に手を差し出してみた。


「それは昨日限定だろい!」

「い、いいの!昨日これで散々ブン太にお菓子取られちゃったんだもん!今日はハロウィン仕返しデーです!」

「なんじゃそりゃ」


さすがに無理があるよな、と思いながら彼の行動を待った。



「ほら」



ぶつぶつ言いながらもポケットから出してくれたのは、ブン太ご愛用のグリーンアップルのガム。



「え…くれるの?」


思ってもみなかった報酬に思わず口から本音がでる。


「自分から言い出したんだろい。いらねーのかよ?」

「いるっ!」



ブン太がガムをくれたってことが、ただ素直に嬉しくて自然と顔が綻んだ。




「ブン太ありがと!」





そう言った瞬間、




繋いでいた方の手を強く引かれ、バランスを崩しそうになった私の腰にブン太はスッと腕をまわす。


「ブン、太?」

「蕗珠、trick or treat」

「えっ」



昨日がハロウィンであった上に残ったお菓子も全部ブン太にあげてしまったため、今日はもうお菓子なんて持っているはずもなくて。


それを見越したようにブン太は意地悪な笑顔を浮かべて私を見る。


「お菓子は?」

「だって…え、と」

「ブブー、時間切れだぜい」


そう言ってブン太は私の唇に軽くキスをした。
突然のキスに驚く私に構うことなく、キスは何度も降ってくる。


「ブン、太…!」

やっとの思いで名前を呼ぶと


「来年のハロウィンはお菓子なくてもいいかも、だって」







悪戯するから






おそらく真っ赤であろう私の耳元で、彼は小さくそう囁いた。






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蕗珠様へ!!

私の頭がハロウィンモードで浮かれているせいか、こんな季節物になってしまいました;

いらないとか言いながらもブン太はきっちりお菓子も奪っていくことだろうと思いますwww

今回は相互ありがとうございました!!



 

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