ショート | ナノ



朝、少し目が覚めて
布団の中で半分眠りながらうだうだしていると
体調が悪いことに気がついた。



…だるい…っつーか頭、痛ぇ…






母さんに言って、熱を計る。







38°C










「よっしゃー!!」


布団の中でガッツポーズ。








今日は誰にも邪魔されずに寝てられる。
母さんにも跡部にも。





気合い入れて寝なきゃって思ってもう一度深く布団に潜り込む。


おやすみ3秒。


のび太にも負けないこの早さ。

さっそく俺は眠りについた。









♪〜♪〜♪



ケータイがメールを受信した。




「だれだC…」


『ジロちゃん今日学校休みなの´Д`??』




あ…






ついつい普通に喜んじゃったけど











…今日は名前に会えない…







「〜〜〜っ」




急に寂しくなって、急いで制服に着替えだす。

そして部屋を出ようとすると




薬を持ってきた母さんとばったり。







…母は強し。










寝てなさいって有無を言わさずベッドに戻された。







「寝てなさい」なんて
いつもならすごく嬉しいはずなのに…
今はちっとも嬉しくない…
名前に会いたい…







『カゼひいたっぽい´Д`名前会いたい』



メールを送って、じーっと返信を待つ。



『大丈夫!?じゃぁ今日はゆっくり休んでね??』








心配してくれて、それだけで心臓がきゅぅんってしちゃう。







『名前すき』









こういう時、ものすごく名前に会いたくなって、ちょっとだけ、甘えてみる。








そしたらなかなか返信がこない。




名前、きっとてれてる。
顔、真っ赤だろな…

…可愛い。


















いくらなんでもメールが遅すぎて、布団の中でごろごろ転げ回ったり。



こういう時間ってすごく長い。













♪〜♪〜♪



鳴った瞬間ケータイに飛び付いて、すぐに画面を見る。







『お前風邪だって!?バカでも風邪ひくんだな`∀´ノシ』






「はぁぁ〜…」

みそっこ岳人かよ…


しかも岳人が風邪ひかないなら、バカは風邪ひかないってゆーのも迷信じゃないC…





てか、岳人が知ってるってことは…









俺は急いでケータイの電話帳を開く。








「忍足ー!?」






『なんやジロー。電話なんてまためずらしな』

「名前に手出ししたら怒るよ」

『跡部やないし、んなことするわけな『えっジロちゃん!?』


否定しようとした瞬間、


電話の向こうから名前の声。


「おーしーたーりー!」


『いやーこれは別に、手を出してるわけじゃ…』

「出すんでしょ!!早く岳人連れて退散してよねっ」



一気にケータイに向かって大声で言った。





「それと」






「名前に代わって?」







忍足はなにやらぶつくさ文句を言っていたけど、割と素直に名前にケータイを渡した。







『ジロちゃん??』




大好きな名前の声。







「今日行けなくてごめんね」

『うぅん、大丈夫だよっ?ゆっくり寝てて?』

「ねぇ」

『ん?』

「名前…好き」



少し間があって、それから



『…ぅん…あたしも…///』




小さい返事が聞こえた。






…俺までなんだか照れちゃいそう///



「あっそろそろ授業??」

『うんっ』

「じゃ、またね。あっ!!忍足とか忍足とか忍足とかに気をつけてね!!」

『あはは〜大丈夫だよお』


…そんなにふわふわしてるから、
大丈夫じゃないんだって。




そして、電話を切った。






名前、やっぱ可愛い。

声も性格もふわふわで、俺名前のこと食べちゃうかも。






俺ってけっこう獣だよね〜、とか考えてたら

さっき大声出したからかな、

急にだるさが増加して





どっぷり頭が枕に沈んでいく―…‥











―…‥







ドアが開く音がして
自分が眠っていたことに気付く。



「おはよーございます」





そこには名前が立っていて、ちょこんと首を傾けおて言った。





「…名前?」







「ジロちゃんのお母さんがね、入れてくれたの。」








時計を見ると、もうとっくに夕方になっていた。



名前は俺のベッドに腰掛ける。


「熱、まだあるの?」
「んーわかんない」





…はっΣΣ(・Д・




こ、これはもしや…

おでことおでこを合わせて…ウフフフフww

なーんて展開っ!?





「はい」
「はいっ!!!」






勢いよくおでこを出した俺には体温計が手渡された。








心の中で泣きながら、体温計が鳴るのを待つ。


「あーーーーー!!!!!」


名前が見たのは、枕元にある口つけてないペットボトルとそのままにしてある風邪薬。



「ジロちゃん薬飲んでない!!」
「きーらーいー!!!!」


そう言ってそっぽを向く。

ぷーっとふくれて怒っている名前を横目に見て、
可愛いなぁって
きゅんってなった。









「…ねぇ、名前?」


そして俺は、
イイコト思いついちゃった。









「名前が薬飲ませて??」









しばらくの間、言葉の意味が理解できないのか名前は、ぽけーっとしてたけど



急にカーっと赤くなる頬。




わかったみたい。





「えっ‥と///」






ぐっと名前の腰を引き寄せる。





「ね?…じゃないと俺、飲まないよ?」






耳元でそっと言うと、名前はこくっと小さく頷く。




薬を二粒手に乗せて、ゆっくりと口へ運び、

そして水を口へ含んだ。







俺の唇にそっと

名前の感触。





硬く閉じているそれをこじ開けて、



俺の口内に水と薬が流れ込む。







そしてそれを飲み込むと、名前は身体を離そうとした。







「んっ…」






だけど俺はさっきより強い力で引き寄せて
舌を名前の口内へ滑り込ませると

名前は素直に
舌を絡ませてきた。







強く強く抱きしめて、夢中で名前の唇を貪り続ける。








「っは…ぁ」








頭が熱く、くらくらするのは


もちろん熱のせいだけじゃない。







「ふっ…んぁ…」



暫くそうやって名前を俺の中に閉じ込める。









この可愛い女の子は、

俺のモノ。







唇を話すと、こてんと名前が頭を俺の肩に預ける。







「…名前だいすき」





優しくキュッって

抱きしめる







「〜〜〜〜っ風邪うつっちゃう///」

「そしたらお見舞い行ってあげるねwww」







真っ赤な顔で俺を見上げる。





「…そしたらまたジロちゃんにうつっちゃうょ///」

「…いいじゃん」









そして今度は



優しいくちづけを…







「…ずっと二人で風邪ひいてよーよ?」




「…ばか///」






キミがいるなら

俺、何度風邪ひいてもいいや、なんて思ってみる。




キスひとつで


熱のつらさも

頭痛も眩暈も



全部とけてしまうから





どうやら大好きな君のキスは

どんな薬より効くらしい。




..END



もどる