ショート | ナノ
「蓮二ー!!」
私は息を切らして彼を追う。
「どうした?名前」
立ち止まり彼は振り返る。
「何度も言ってるじゃん!
歩くの早すぎだよ!」
「コンパスの差だろう」
「コンパス?」
「足の長さという意味だ」
「ひどっ!」
てくてく、てくてく
毎日私は彼の後ろを早足で。
そう、毎日毎日。
だけど今日から
晴れて恋人同士になった私達。
それなのに、この構図はおかしいですよ。
蓮二は今も私の少し先を歩き続ける。
てくてく、てくてく
「蓮二ー」
てくてく、てくてく
「蓮二ー?」
てくてく、てくてく
「バカー!もう一人で行っちゃえー!!」
クスッと笑った声がして
「仕方のないやつだ」
差し出された左手。
ぎゅっとその手を握ったら
私の後ろについてくる影法師も
もうひとりじゃない。
これからは
こうして二人、手をつないで。
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